どっちだっていいか 満月だ

サヨナラCOLOR

「永積崇の声に生まれたかった」

・・・そう話した青年がいた。
「福祉系の大学の先生になるんだ」
そう言って職場を去って行った、
スーパーバタードッグが大好きな青年だった。

「昨日、ハナレグミの武道館に行ってきたよ」
初めて永積崇のライブを観た翌朝、私がそう話したら、
「ハナレグミって武道館でやるようになったんだ・・・」
ちょっと驚いたような表情を見せ、感慨深げに言った。
バタードッグが解散した翌年だった。

「学びながら助手として働き、いつか教壇に立つんだ」と話した。
「高みを目指してる若者は眩しいねえ」と返した。
なりたいものになれたらいいね。
・・・心の中でエールを送った。


スーパーバタードッグの『サヨナラCOLOR』を、
2004年に初めて聴いた。

きっと聴いた人の多くの人がそうなのだろうと思うけれど、
初めて聴いた時の感動はずっと離れないでいて、
いつまでも鳴り止まなかった。
耳に残ってずっと尾を引いていた。
“衝撃が走る”って、きっとこういうことを言うんだと思った。

どうしようもないやるせなさ。
泣きたいけれど泣けない気持ち。
そんな気持ちをシンプルに真っ直ぐに紡ぎ、
素直にそして伸びやかに歌っていた。
ゆるやかな涼しい表情で優しく歌っていた。

ソロのハナレグミが始まって間もない頃、
「あの曲があって、“ハナレグミ”を創っていこうと思った」
・・・彼がそう話しているのを知る。

「ハナレグミを聴きたい」という気持ちが高まるのに、
時間はかからなかった。

2008年にスーパーバタードッグは解散し、
最初で最後の地上波TV出演で『サヨナラCOLOR』を歌った時は、
「今夜、最高に素晴らしい歌声が聴けるはずよ」と、
出来る限り多くの人に言い触れ回ったことは言うまでもない。

『サヨナラCOLOR』・・・
きっとこの先もずっとずっと、
私の中で尾を引いて離れないでいるのだと思う。


その後・・・彼の歌声にたくさん触れた。
声の温度、トーン、表情、情景。
すべてがほんとに心地良くて。
その歌声にすっかり心を奪われてしまった。

泣きながら笑っているような稀有な歌声は、
“上手い”なんて陳腐な言葉では語りたくないくらいに好き。
ずっと聴いていたい・・・そんな声だった。

『帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。』
ハナレグミの3rdアルバムでは・・・
まるで口笛を吹いてるように楽しそうに歌っていて。
自然に飾らずに力を抜いていて・・・こんなにも届いてくる。

力を抜いて歌うところの声がほんとうにいい。
いい感じに力が抜けたその歌声は・・・
思いが浮かび上がって見えてくるようで。
ほんとうに歌うことが好きなんだな、と思う。

私は、あの震災の後、一ヶ月くらいずっと、
この盤ばかり繰り返し聴いていた。
理由などないけれど、こればっかりだった。


「ただの“歌うたい”になりたくて。
 なんでもない、誰でもないものになりたかった」

ヴォーカリストとして、
永積崇が素晴らしい(すぎる)ということは周知の通り。

ただの“歌うたい”になりたい、と語った彼だけど、
「音楽とは歌うものだ。自分で歌うものだ」
・・・そんな言葉も後に聞くことになる。
やっぱり彼は歌うべくして生まれてきた人なんだな、と思う。

その歌声は聴けば聴くほど、
ほんとにプロフェッショナルな“歌うたい”だと脱帽するばかり。
彼はどこまでもヴォーカリストなんだな、と感じてしまう。


本当のことが 見えてるなら 
その思いを 僕に見せて


本当のことっていうのは
多分すごくシンプルなことで、
言葉にしてしまうとどこか照れくさくて
どこか本当じゃなくなってしまう気がする。

大人になるといろんなことを覚えてしまって、
きっと・・・言葉なんてものは
自分の胸の奥まで届かないことが多くなってる。

本当のことをシンプルに詞にして歌う。
歌にするとほらこうやって・・・
毎日のシンプルな日常の中で、
ふっと何かを振り返ったりすることが出来る。
日々の暮らしの中の何かをそこに見る。
穏やかな気持ちに包まれながら。
そんな自分を今まで繰り返し見てきた。
彼の歌声の中にあって。

彼はきっと、
そういうことがちゃんと分かってる人なんだよね。
彼の歌を愛せずにはいられない理由は、
きっとこんなところにもある。
ライブの帰り道は決まって・・・
「ありがとう」なんて言いたくなってるんだ。

ちゃんと届けたいと歌う声は、
ちゃんと届きたいと思う人に届くものだから。

ヴォーカリスト永積崇の歌声って・・・
毎日のふとした時にこうやって聴こえてきて、
シンプルな日常の中の大切な何かを
振り返らせてくれたりするんだよね。
毎日にそっと色を添えてくれるんだよね。


「『サヨナラCOLOR』って、なんかせつないです。
 結局、バターのラストになっちまったアルバムの
 最後の曲だったりするんで・・・。
 歌詞が崇の気持ちとシンクロしちゃってるし」

永積崇の声に憧れ、
スーパーバタードッグを愛した青年は、
あの日そんなことを話していたっけ。

「キヨシローと崇の『サヨナラCOLOR』っていいんだよな」と彼が言い、
「キヨシローと崇の『君が僕を知ってる』もいいんだよね」と私が言った。


サヨナラから はじまることが
たくさん あるんだよ


「永積崇の声に生まれたかった」青年は、
ちゃんとなりたいものになれただろうか。
・・・時々、この歌を聴くとあの日の彼を思い出す。



ため息の理由。
ハナレグミのカバーアルバムなんていいに決まってるけれど、
『だれそかれそ』がすこぶる良かったので、
自分の中でどんどん“永積崇”が溢れ出してきてしまい、
もう手に負えない。

このままだと完全に崇ジャンキーになっちゃうから(笑)、
モードをリセットして今度はバタードッグにチューナーを合わせた。

でも・・・
『サヨナラCOLOR』なんて聴いちゃったりしたら・・・ダメじゃん。
ハナレグミとの馴れ初めなんかまでじんわり思い出しちゃったりして、
センチメンタルが止まらないじゃん。

どなたか・・・“崇止め特効薬”を私に処方してくれませんか?
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by kurin1022 | 2013-07-13 22:19 | ハナレグミ | Comments(6)
Commented by ひなた at 2013-07-15 21:43 x
こんにちは、くりんさん。
私は、「家族の風景」で彼を知りました。出会って同じような状況になりましたよ、一気にね。
やはり尾を引いて離れませんでしたね。生きてるうちにこういう出会いって何度来るのかしら。
それからどんどんのめり込み今に至っているのですが、
中毒のように浸れる音楽はそうそうないかと・・・。幸せなことだと私は思ってます。
もちろんくりんさんもですよ!
Commented by kurin1022 at 2013-07-16 10:50
♪ ひなたさん

初めて“家族の風景”を聴いた時、
このリリックにキュンと・・・アンテナが引っかかったんです。

「何を見つめてきて 何と別れたんだろう
 語ることもなく そっと笑うんだよ」

ウチには、キッチンにウイスキーグラスはあるけれどハイライトはないよ(笑)。
永積家の日常のキッチンの風景。優しい空気が流れてて。
どこにでもあるような家族の風景は、
イコール・・・“ここにしかない家族の風景”なんですよね。
そんな温かい気持ちにふっと包み込まれちゃう。
こういうトコ・・・深いね、タカシって思いました(笑)。引き込まれましたよ、もちろん。
シングルも持っていて、その中の・・・“マドベーゼ”の弾き語りが好きです。
この彼のギターは、時の流れを止めてしまいます。大好きです。
Commented by ヒナ at 2013-07-16 18:07 x
寝ても覚めても どーなっとん(笑)。
Crazy Love状態ですな(笑)。
ヤクは一度ハマルとなかなか抜けられないってよ、くりんさん!(怖っ!)。
まあ・・・タカシって麻薬に手を出しちゃったくりんさんの自己責任やね(笑)。
ま、仕方ないよ、タカシの声には私だってそうなっちゃうもんね。
しかし・・・タカシ恐るべし!!!(怖っ!)。
Commented by kurin1022 at 2013-07-18 10:35
♪ ヒナさん

ヤク抜きに・・・今はもっぱら車中では、相方が持ってる落語のCDを聴いてます(笑)。
どうやら定期的にタカシ中毒にかかるみたいね、私(自己分析してみた)。
彼の声しかいらなくなっちゃう時期がやってくるみたいよ(笑)。
震災後なんてしばらく、3rdの『帰ってから・・・』しか聴きたくなかったくらいだったから。

・・・このアルバム、好きだわぁ。
この盤については・・・もう語れちゃうよ(またまたタカシ中毒・笑)。
子供の声とか虫の声とかが入ってる感じのザラッとした手作り感がヨロシ。
一つ挙げろと言われたら(言われてないけど・笑)
『ありふれた言葉』かな。カバーだけどね。好きだわぁ、この声。
アコギとウクレレと彼の声と・・・。それしか世界にはいらないじゃんって感じてた。
余計なものはいらなくて、
知らなくていいことは知りたくなかった気分だったしね。

世の中のカッコつけてる(笑)歌たち(ふふ・・・)に言ってやりたいよ。
『帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。』
・・・そんな歌声があるだけで、もう充分すぎるほど・・・“歌”になるんだぜって(笑)。
Commented by siriki-otona at 2013-07-19 18:52
ワタシも時折
タカシモードになります。
服を脱いで
タカシ温泉につかる感じ。
「あぁ、いい湯だなぁ」って。
・・・バッチリ効能アリです。

Commented by kurin1022 at 2013-07-20 08:08
♪ sirikiさん

タカシ温泉、常連さんでしたか(笑)。
私は、つい長風呂になっちゃうけどね。他の温泉には行かなくなっちゃうし。
どっぷり浸かってしまいます。のぼせるまでね。
ハナシ変わって・・・
ミニシアターが近くにあっていいですね。
ああいう味のある映画っていいですよね。
そちらは、どんな夏を迎えているのかしら。
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