どっちだっていいか 満月だ

カテゴリ:ハナレグミ( 29 )

ファンキーパーリーな時間

“ハナレグミ・So many tearsの竹取物語”
 2014.2.6 @ 新木場 STUDIO COAST



素敵なライブはいっぱいあって。
世の中はたくさんの音で溢れていて。

けれど・・・この人のライブに行った時ほど、
「音楽って楽しいな」って感じてる自分をみることは、
他にはなくて。


「だれでもない どこにもないぜ
 僕だけの光と影」

じんわりと温かな彼の声が伸びてゆく。
たゆたうように大きくパーッと空間に広がってゆく。
一瞬で・・・彼の世界に引き込まれてた。

『光と影』は、やっぱり欣ちゃんのドラムだよね。
いきなり感動が押し寄せてきたような気持ち。
いいな、こういう温かい雰囲気。
丁寧に音を重ねて、丁寧に歌声を届ける感じ。

So many tearsの奏でるどこか懐かしく感じる音が、いい。
心地いい音で充満する温かな空間。
そして・・・そのバンドの音に乗って歌う彼の声が、いい。

『Woman “Wの悲劇”より』を擦れた声で優しく歌った。
宇宙の果てまでも届くような伸びやかな彼の歌声もいいけれど、
私はこんな風にささやくように歌う彼の声が好き。

『いかれたBaby』も良かったな。
「ワンモアタイム」と優しい声で、崇くん。
シンガロングの一体感は、
ハナレグミならではの温かな演出ね。
素敵ね、ほんとに。

“フィッシュマンズの名曲”が“崇くんの歌”となって届けられる。
佐藤さんの原曲が崇くんの体を通り抜けて、
新たにハナレグミの『いかれたBaby』になって湧き出た感じ。

彼の歌声の魔法にかかると、
カバー曲はみんなこんな風に自分のモノになっちゃう。
人様の歌をなぞらえてる借り物じゃなくって、
ハナレグミの『いかれたBaby』にしっかりなってるところが、
聴いてて心地良くて。気持ち良くて。
圧倒的な歌声の素敵な魔法ね。

オザケンの歌って、どの歌も盛り上がるんだね。
怪物アルバム『LIFE』は世代を超えてるんだね。
『ぼくらが旅に出る理由』をあんなにみんなが歌えるなんてね。
擦りきれるほど『LIFE』を聴いたジャストなオザケン世代の私は、
ちょっとびっくりしたシーンだった。

『HUMAN NATURE』は“Wタカシ”でしっとりと。
なんて素敵。ゆったりと聴き入ってしまう。
大好きなこの歌を、崇くんの声で聴けるなんて。
ハナレグミの歌に寄り添った加藤隆志さんのギター。
これがまたカッコ良くて。

崇くんも欣ちゃんも、
笑顔ひとつで周りを幸せにしちゃう人ね。
こういう笑顔の素敵な人と出会うと、
「これからも笑って生きていこう」なんて、改めて思う。
ありがとう。

「ああ、今日も楽しかったな」
そんなささやきで始まった『サヨナラCOLOR』。
潤んだその声は、泣きたくなるほど温かい。
胸がじんわり熱くなった。


“宇宙”がテーマのこのライブ。
みんなが宇宙服のような衣装を着て、
耳が付いた宇宙っぽい帽子を被ってた。

一人一人登場してきて整列するシーン。
背の高いお隣さんを見て背伸びしてみせた崇くん。
そのお姿はまるで、Dr.スランプのアラレちゃんのよう。
クスッと笑いを誘った。

「ハンキーパンキーじゃなくて・・・
 今日はファンキーパーリーって感じ」

そう言って笑ったアラレちゃんの彼は、
今宵もファンキーでソウルフルな歌声を存分に聴かせてくれた。

楽しかったな。
素敵なファンキーパーリーな時間。
このバンドでまた、彼の歌声を聴いてみたいな。


SET LIST

01. 頼りない天使(フィッシュマンズ)
02. 光と影(ハナレグミ)
03. ナイトクルージング(フィッシュマンズ)
04. 音タイム(ハナレグミ)
05. Lazy Midnight Hour(So many tears)
06. オアシス(ハナレグミ)~ ぼくらが旅に出る理由(小沢健二)
07. 愛にメロディ(ハナレグミ)
08. オハナレゲエ(ohana)
09. HUMAN NATURE(マイケル・ジャクソン)
10. 女神大橋~Venus Wing Bridge(沖祐市)~ 炎のランナー(ヴァンゲリス)
11. Heart Of The Sunrise(Yes)
12. Woman “Wの悲劇”より(薬師丸ひろ子)
13. (don't let go of your)PRECIOUS(So many tears)
14. ハンキーパンキー(ハナレグミ)
15. Go Go Round This World!(フィッシュマンズ)
16. いかれたBaby(フィッシュマンズ)
17. サヨナラCOLOR(SUPER BUTTER DOG)

<アンコール>
18. 銀河鉄道999(ゴダイゴ)
19. 銀河鉄道999(ゴダイゴ)
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by kurin1022 | 2014-02-18 13:04 | ハナレグミ | Comments(2)

星空の中、聖なる夕べに。

【ワンだらけツーだらけスリーだらけカバーだらけ!】
細野晴臣/ハナレグミ/クラムボン
2013.12.25 @ 中野サンプラザ



サンタさんが素敵な歌声を届けてくれた聖なる夜。

「ここに星空を創りたいと思います」
『空に星があるように』を歌うハナレグミの声が、
満天の星空の中にゆったりと伸びてゆく。

時折擦れるように歌う温かな潤んだ声。
スティールパンのやわらかな滲んだ音。
星空の中でまあるく広がって溶けてった。

最高のクリスマスプレゼント。
ありがとう。そっと・・・感謝した。
“こんな優しい気持ちになれる今”に。

歌い終わった後、
崇くんが小さくガッツポーズ。
私も心の中でガッツポーズ。

『ガラス越しに消えた夏』も素敵だったな。
いつまでもずっと耳に残って鳴っていたよ。
「いい曲だなぁ」って改めて感じてた。

2013年のクリスマスの夜。
大好きなこの歌に、
大好きなこの声に、
“すっぽり包まれているこの幸せ”に、
そっと・・・心から感謝した。


“滋味溢れる声”って、
きっとこういう声を言うのだろう。
細野晴臣さんの声が深さを添える。
穏やかな声。優しい空気で満たされた。

細野晴臣さんが渋くてカッコ良くて。
原田郁子さんがひらひら舞って。
ミトさんがハイテンションに語って。
崇くんが陽気に盛り上げた。

最後にみんなで真っ赤なサンタさんになって、
ハナレグミの『MUSICA』を奏でた。
崇くんの温かな歌声。
胸の奥まで沁みた。

好きな音楽を自然に楽しんでる彼を観た。
変わらずにそのままいて下さい。
心の中で自然に・・・
サンタさんに、そうお願いしてた。


“毎日繰り返される日々の暮らし”に、
“私の大切な人たち”に、
「ありがとう」って言いたくなった。
素敵な星空のクリスマスの夕べに。
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by kurin1022 | 2014-01-07 09:08 | ハナレグミ | Comments(4)

いちょう並木のセレナーデ

「この声に恋しない人の気持ち、わからないっす!」

コリーヌ・ベイリー・レイの声をそう表したのは永積崇だけれど、
私は・・・ハナレグミの声に恋しない人の気持ち、わからないっす!


「何、この声・・・。どうしちゃったの」
友達から嬉しくなっちゃう言葉が届いた。
なんか、くすぐったいような気持ち。
どうしたもこうしたも・・・
そういう声なんです(と言う他ないんですけど)。

「いちばん好きなボーカルはハナレグミ。永積崇の声」
彼女に前にそう話したことがあった。
“ハナレグミ”も“永積崇”も“家族の風景”も
“スーパーバタードッグ”も“サヨナラCOLOR”も・・・
「何一つ知らないんだけど」と話してた彼女だった。

「ハナレグミが歌い出した途端・・・びっくりしちゃった」
彼女がめぐり会えた“びっくりしちゃった素敵な歌声”は、
ハナレグミとリリメグの『いちょう並木のセレナーデ』だった。


この二人の声のセッション・・・いいなぁ。
安めぐみさんと丁寧に声を重ねたこの感じが好き。

お相手が原田郁子さんとか畠山美由紀さんとか
独特な癖のあるアンニュイな雰囲気のボーカルじゃなくて、
初々しいたどたどしさが漂う控えめなあまい彼女のボーカルが、
この曲にはとても似合った。


小沢健二の怪物アルバム『LIFE』の中にあった曲のカバー。
彼のアルバムには、ライブ音源でこの曲が入ってた。
温かな優しいメロディーの中で拍手が湧いて・・・。

オザケンのポップな声で歌ったこの曲を聴く度に、
“いちょう並木の下で祝福される結婚式のカップル”を思い浮かべる。
1994年に初めて聴いた時から、何故だかずっとそうなんだ。
見当違いな受け止め方だってことは、重々承知してる。

湧き上がる温かな拍手と歓声が“幸せな空気感”を創り出していて、
奏でるメロディーがあまりにも優しくて素敵だから、かな。

“幸せいっぱいの恋人たち”を歌った歌ではないのにね。
「ブルーの用意はできてるの」
・・・そう、せつなく歌ってるのにね。


ハナレグミとリリメグは、素朴な音で優しくしっとりと歌い上げた。
甘酸っぱい気持ちに包まれて、時折キュンと揺らしてくれた。





「歌い出しの声がとにかく凄くて・・・。
 あとはぐいぐい引き込まれてた。聴き入っちゃった」と友達。

ね、この声に恋しない人の気持ち、わからないでしょ。
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by kurin1022 | 2013-11-30 10:41 | ハナレグミ | Comments(4)

タカシの夜。

浜崎貴司 GACHI シーズン3 [最終回]
其の五 浜崎貴司 vs. ハナレグミ
2013.11.15 @ shibuya duo MUSIC EXCHANGE



“声”にたっぷり包まれた夜。

この人の声は、なんて心に沁みるんだろう。
弾き語りで歌うこの声を、なんて表現したらいいんだろう。
情景がゆっくり浮かんできて、
一つ一つの言葉が胸の奥まで響いてゆく。

“ささやき”や“余韻の間”にもグルーヴが匂い立つ彼のボーカル。
弾き語りで聴くとビンビン届いてきて贅沢な気持ちになる。

崇くんの潤んだ声は、会場の空気を震わせる。
会場いっぱい震わせながら、優しく伸びてゆく。


貴司と崇。
とても素敵な・・・“タカシの夜”だった。
こぢんまりした感じのいいハコ。
椅子もあって(嬉しい!)ちゃっかり三列目に。
腰掛けて終始ゆったりとたっぷりと堪能した。

「今日は“タカシ~!”って呼ばれると、
 勘違いしちゃいますから気をつけるように」
浜崎さんがそう言ってみんなを笑わせる。
この人のハナシは素朴で飾らなくて面白くていいね。
何度もクスッと笑った。

「浜ちゃん」「積ちゃん」と呼び合って、
『GACHIのテーマ』からスタート。

その後、オリジナル・ラブの『接吻』を二人で歌った。
浜崎さんの太くて強い声は、この歌に凄く似合った。


ハナレグミのステージ。
ジャジーな感じのグルーヴの『大安』を聴く。
ゆったりと揺れていて・・・こういう感じ、素敵ね。
「たいあいあいあいあん」って擦れたように歌う声がいい。

ザックリ刻むギターを弾く彼の姿もいい。
崇くんの弾くギターの音が好き。
素朴で温かくて優しくて。
冷たい雨の一日だったけれど、心がポカポカ温まってゆく。

「こたつでみかん(この感じがたまらなく好きらしい)って感じの歌を
 この後やりますから、ちょっと温まっておきたいんで『音タイム』を」
歌い出しで“シャンシャン”って鈴の音を足で鳴らしてみせて、にっこり。
広がる青空を見上げるような気持ちになる。ウキウキ揺れてて。
一気にハナレグミワールドに導かれていった。

くるりの『男の子と女の子』には胸が大きく揺れた。
この曲は、いつ聴いてもキュンとなっちゃうな。
せつなさと甘酸っぱさが交差して、優しい気持ちに包まれた。

『エイリアンズ』『きみはぼくのともだち』『PEOPLE GET LEADY』と続く。
なんだか「ああ・・・」としか言えなくて。言葉が見つからなくて。
彼の潤んだ声にすっぽり包まれて、いつしか心がしっとり潤んでいた。
『きみはぼくのともだち』では、すすり泣く声があちこちにあった。

『家族の風景』の合間に、小さなお子さんの可愛い笑い声が届く。
彼にも届いたのだろう。にっこり笑顔になる。
歌い終わって曲の最後のところで、
「あきゃきゃきゃきゃ」と優しく可愛く真似してみせた。
「ね、いい相方いるでしょ」とにっこり笑った。
ハナレグミのライブではこういうシーンを度々観る。
彼独特の温かな空気感にふわりと包みこんでしまう。
こういう温かさも彼の大きな魅力の一つ。

「ちょっと歌いたくなっちゃったんで。今日はハイボールありますかぁ?」
後ろのバーを覗き込むように声を掛け、
「あるってー!この後の休憩の時みんな飲んで!」とにっこり笑う。
「もう少し しゃべりましょ」「ありふれた 話でしょ」
歌詞を前振りしていちいち教えてくれてみんなで歌った。

『ウィスキーが、お好きでしょ』を高らかに歌い上げた後、
「明日は晴れるようにね」と『明日天気になれ』を歌って、
こっちのタカシはひとまず去って行った。

上手く言えないけれど、崇くんの歌声の中にいる時は、
“商業的な匂い”みたいなモノが全く感じられない。

“歌うことが大好きな人”が楽しそうに歌うその姿は、
観ていてとても心地いい。
歌うことで人をほんとに幸せにする人ね、彼は。


浜崎さんのステージの後は、また二人のタカシで。
それぞれのくっきりした個性を観た後で調和する二つの声を聴く。
それぞれちゃんと主張しつつも尊重し合って混じり合う。
二人の歌い手のなせる技ね。いいね、大人の音楽って。

「二日前に二人で創って頭ん中で鳴りっぱなし」と崇くん。
「僕たちタカシ」「小さくてもタカシ」「安物でもタカシ」「高島屋でタカシ」
共作の『タカシの唄』を披露。会場は大爆笑。

「“タカシの夜”なので“タカシ縛り”で演ろうと思います」と笑う。
やなせたかしさんの『アンパンマンのマーチ』を、
二人で元気いっぱいに歌ってくれた。ほんとに元気が出る歌ね。
 
陽水のアルバム『氷の世界』から『帰れない二人』を披露。
綺麗な二つの声の重なりをうっとり聴いた。

「久富隆司さんの歌を。どんとさんの本名もタカシ」
ボ・ガンボスの『誰もいない』には、胸がキュンと潤んで熱くなった。
ああ、いい歌だなぁ・・・って改めて感じてた。

私がハナレグミを好きな理由の一つは、
どこかにちょっとした“遊び心”があるところ。
少し崩してくだけた感じにみせる彼のそのバランス感覚に、
いつもくすぐられてしまう。

『光と影』のような大きな楽曲でも、
「ぼんやり ぽっかり はっきり くっきり すっぽり うっとりと」という
ゆるやかなフレーズがちゃんとあって。
そこでほっこりやわらかい気持ちに包まれてしまうんだ。

どんとの曲の魅力は、そんな“遊び心”が満載なところ。
(おこがましいけれど)「センスいいなぁ」っていつも感じてしまう。

この夜の『誰もいない』は、歌詞が真っ直ぐに届いてきて、
なんとも言えない感慨に包まれてしまったけれど。

「がれきの街は ひっそり音もなく
 風がないても 答える人もない
 からっぽだったら みんなわるくない」

崇くんは、どんとのことが好きすぎて夢に出てくるのだという。
「どんとに抱きついてる夢。背が高いどんとの腰のあたりが自分の顔で」
「どんとに会えた嬉しさに泣いちゃったんだよ、夢の中で」
にこにこ嬉しそうに語った。

人が“好きな人のことを話す時の顔”って大好き。活き活きしてて。
崇くんって、ほんとにいい顔するんだもん。
「起きたらほんとに頬が濡れてたんだよ」って、嬉しそうに楽しそうに。
「会ったことあるんか。マジか・・・。
 どんとと会ったことあるなんてもう僕から言わせたら、
 “ボブ・マーリーに会った”みたいなことになってるから」と羨ましがる崇。
「どんとからは“先生”ってなぜか呼ばれたんだよねぇ」と貴司。爆笑。
 
「キヨシローさんとも歌ったことがあるこの歌を」
「『サヨナラCOLOR』っていう曲を」・・・会場が歓声に包まれる。
これはもう・・・「キャー!」でしょう!

「そこから旅立つことは とても力がいるよ」
ハナレグミの温かな声がパーッと会場いっぱいに広がった途端・・・涙。
後半は浜崎さんがリードボーカルをとった。
言わば・・・キヨシロー役が崇くんね。ハーモニーを優しく重ねた。

崇くんはキヨシローみたいに立って歌った。
浜崎さんが一人で歌ってる時にぐるりと会場を見回してた崇くんの顔。
とても優しかった。愛おしそうに穏やかに微笑んでた。
彼はほんとに幸せそうな表情をする人ね。
そんな崇くんの顔を観ていたら・・・また涙。
なんか、とてもいいシーンだったな。
ああ、今日観に来てほんとに良かったな。

キヨシローとの思い出話をそれぞれ語った。
崇くんは、中学の後輩だということをキヨシローに話したら、
「そっか、後輩か!」って何十回もそれだけ言われ続けてた・・・って笑った。
「後輩か!バッチリだ!って何がバッチリだかわかんないけど」と嬉しそうに。
浜崎さんは、「キヨシローさんから電話をもらって。いつも間があるんだよね。
いたたまれなくなってこっちから切るみたいな・・・」とやっぱり嬉しそうに。

アンコールの『幸せであるように』では崇くんがドラムを叩いた。
「僕、沼澤尚だから!」と嬉しそう(“タカシ縛り”ね、ほんとに)。
崇くんの髪型ってボブみたいな感じだったんだ!
ちょっと(かなり)びっくり。
いつもは耳にかけてるし(そのほうが断然いい・笑)、
大抵は帽子が載っかってるからね(早く耳にかけて欲しいと思ってた・笑)。
髪を耳にかけずにボブっぽく見せて、帽子も脱いでみせたりしてはしゃぐ彼。
なんてったって・・・ドラマー沼澤尚だもんね。

おおはた雄一さんが飛び入りでギターで参加。
笑顔がいつもほんとに優しい人ね。
楽屋にフラリと遊びに行ったら、
「YOU、出ちゃいなよ」って二人のタカシに言われたらしい。

途中で「ラップやってもいいっすか」と崇。
すかさず『ブギー・バック』を歌う崇。湧く客席。
いつものBose役が崇で、いつもの崇役が貴司。
途中で貴司のラップが止まってしまって上手く立て直す笑顔の崇。
楽しそうね、とっても。
もちろんみんなで「よくなく なくなく なくなくない?」と大合唱。
今夜の「心のベスト10 第一位」は『幸せであるように』ね。

「ほんとは鳩笛でラップんとこやりたかったんだよねぇ」
最後に腰フリフリしながら鳩笛を吹いてみせて、
崇くんがおおはたさんと肩組んで笑顔で去って行った。

「おおはたくんは初回のガチの相手で、
 ガチの最終日だからって今日来てくれたのかなぁ。
 彼のそんな気遣いってなんか嬉しいですね」
浜崎さんが感慨深げに最後にそう話されていた。

浜崎さんの『かえりみち』という歌が、ラストソング。
ブルーの照明の中、強い声が大きく響き渡った。
浜崎さんをちゃんと聴いたのは今日が二回目。
内省的な詞といつまでも耳に残る太くて強いその声が、
独特の世界感を創り出す人だ。


二人のボーカルのコントラスト。
ストレートに強く胸に飛び込む浜崎貴司の声。
じんわりとすっと胸に入り込むハナレグミの声。

きっとこの夜・・・
会場にいた誰もが、
この幸せな時間を噛みしめるように味わっていたと思うよ。

出来ることなら、このままずっと時が止まって欲しい。
出来ることなら、このままずっと終わらないで欲しい。
そう願っていたと思うよ。

あの晩、あの場所にいた人たちはきっと・・・
“世界中でいちばん幸せな歌の世界”にいたと思うよ。



SET LIST

--浜崎貴司&ハナレグミ--
1.GACHIのテーマ
2.接吻

--ハナレグミ・ソロ--
3.大安
4.音タイム
5.男の子と女の子
6.エイリアンズ
7.きみはぼくのともだち
8.PEOPLE GET LEADY
9.家族の風景
10.ウィスキーが、お好きでしょ
11.明日天気になれ

--浜崎貴司・ソロ--
12.くちづけ
13.MUSASINO
14.グローバ・リズム
15.恋サクラビト
16.僕は忘れない
17.ドマナツ
18.時はただ今だけを乗せて
19.ハレルヤ

--浜崎貴司&ハナレグミ--
20.タカシの唄(書き下ろし曲)
21.アンパンマンのマーチ
22.帰れない二人(井上陽水&忌野清志郎のカバー)
23.誰もいない(ボ・ガンボスのカバー)
24.サヨナラCOLOR(SUPER BUTTER DOGのカバー)
25.GACHIのテーマ・リプライズ

--アンコール--
26.幸せであるように〜今夜はブギー・バック
  (浜崎貴司、ハナレグミ、おおはた雄一)
27.タカシの唄(浜崎貴司、ハナレグミ、おおはた雄一)
28.かえりみち(浜崎貴司・ソロ)




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by kurin1022 | 2013-11-19 14:28 | ハナレグミ | Comments(13)

多摩蘭坂

「ハナレグミの『多摩蘭坂』を聴くと泣いてしまう」
一回り年上のキヨシローファンの方がそう話された。
キヨシローの大ファンの方もおんなじ感慨に包まれるんだ。
・・・ちょっとくすぐったくなった。

『多摩蘭坂』はRCサクセションの代表的なバラードナンバー。
永積崇の歌った『多摩蘭坂』は
数え切れないくらい聴いているけれど、
いつだって寂寥の感に包まれてしまう。
いつだって胸が潤んでしまう。


夜に腰かけてた 中途半端な夢は
電話のベルで 起こされた


感情を抑えた静かな歌い方で優しく始まる。
そして・・・

だけど どうも苦手さ こんな夜は

このフレーズで溜めていたせつなさが一気に溢れ出す。
我慢していた感情がほとばしる瞬間。

抑えていた思いがこみあげるような彼の歌声の、
このワンフレーズに泣いてしまう。


照れ隠しなのですか?泣いたっていいじゃないですか。
「年甲斐もなく」や「不覚にも」は余計ですよね、と心の中で思う。
「声が沁みる。俺の世代でも聴けるなぁ」としみじみと話された。
永積崇バージョンの『多摩蘭坂』が大好きな私は、
キヨシローファンの方に「いいね」と言われたことがなんだか嬉しくて。

「キヨシローの歌った『多摩蘭坂』とは感じが違うんですよね」
私は、率直な気持ちを話した。

多摩蘭坂に一人暮ししてる若者の歌・・・と聴くけれど、
「一人だとこんな夜ってやっぱ寂しくてさ」と戯れてみせて、
寂しさを紛らわせてやり過ごしてる若者って感じがする。
ちょっとやけっぱちになってるような若さが眩しかったりもする。
キヨシローの歌声は、私にはそう届いてくる・・・と話した。

「今度、飲もうよ」「たまには家においでよ」「遊びに行くよ」
そんな言葉を寂しんぼのこの若者に掛けてみたくなるし、
「じゃあ、実家も近いんだし一人暮しなんてやめちゃいなよ!」
そう戯れたりもしたくなる。

ハナレグミの歌う『多摩蘭坂』の若者には掛ける言葉が見つからない。
触れることも、声を掛けることさえもためらってしまう。
ただ、ギュッと抱きしめることしか見当たらないんだ・・・と話した。

「そうなんだよ。ハナレグミの声って凄いよ」
おんなじ受け止め方をされていたことを知った。ちょっと驚いた。


「NHKのSONGSって番組でキヨシローとハナレグミという人が
 『君が僕を知ってる』をセッションしてて、ほんとに良かった」
そう話されたことがきっかけで、好きな音楽のハナシをしたことがあった。

“スーパーヴォーカリスト・ハナレグミ”の素晴らしさを私は話した。
「こんなスゲー歌詞を書く天才を眠らせておくなんてバカだよね」
キヨシローの名曲『スローバラード』のハナシを彼は語った。
「多摩の詩人のまま世界の片隅で燻らせておくなんてバカだよね」
RCのアルバム『シングル・マン』が数年間お蔵入りしていたハナシをされ、
このアルバムがどんだけ素晴らしいかってことを熱く語った。


話しているうちに、どうでもいいようなことが何となく口をついて出た。
「もう年だから、くりんさんのような学生みたいな音楽の聴き方はしない」
少し年上の人からこないだそう言われたんですよねって、何気に話した。

中年になるとライブから遠ざかってしまう人は少なくない。
高校生の時に行ったコンサートが最後で、
キヨシローが亡くなった時は「誰だか知らない」って話されていたし、
「主婦だから音楽聴いてるヒマなんてない」って話されていたし、
音楽の楽しみ方は人それぞれだからねぇ・・・と思って黙って聞いていた。

私にとっては、ほんとにどうでもいいハナシだった。
けれど・・・彼はちょっと熱くなった口調で、こう返された。
「いつまでも学生のままでいい」と。


2011年5月2日。
キヨシローの命日に行われたトリビュート・ライブ。
ドカドカうるさい華やかなR&Rナンバーが次々と奏でられる中、
サブステージの静寂に包まれた空気の中に一人で立ち、
ギターを抱えポツリと静かに『多摩蘭坂』を歌う永積崇の姿を観た。
ああ、この選曲は彼しかないな・・・そう思った。

ハナレグミの『多摩蘭坂』は『だれそかれそ』の最後にある。
「崇くん、ナイス曲順!」っていつも思う。
この曲がアルバムの最後で良かった。

『多摩蘭坂』は・・・
最後に静かに“鳴る”曲なんだ。


            (両手にかわいこちゃんの歌うたい・・・たまらん♪) 
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by kurin1022 | 2013-10-23 16:14 | ハナレグミ | Comments(9)

ハナレグミの“だれそかれそ”の夜。

“ハナレグミツアー だれそかれそ” 2013.9.26 Zepp Tokyo


“永積崇”という人とおんなじ時代に生きている。
そのことが、こんなにも嬉しい。

こんなに楽しくて幸せな空間ってないもの。
こういう空間こそが私が求めてたものなんだ。


“永積崇”という人は特別な不思議な存在。
彼の創り出す幸せな独特な空気感。
ウキウキしたり、ジーンとしたり、
ハッピーになったり、ホロリとしたり。
こんなにも心躍らせ、魅了し、幸せにしてしまう。
歌声が世界遺産ならば、
創り出す空気感も世界遺産級ね。

なんでこんな幸せな気持ちになるんだろう。
彼の声に包まれるとなんでこうなるんだろう。
ハンドマイクで思いっきり前に出て
高らかに歌ってくれた『愛にメロディ』を聴いて、
なんでこんなに泣けちゃうんだろう。
とびっきりPOPでサイコーに明るい歌なのに。

長い間、私はずっと「なんで」の答えを探してた。
この夜、彼の歌声の魔法の中にあって、
ふっと答えを見つけたような気持ちになった。

“音楽の神様に選ばれた人”なんだ。
きっと、そうね。だって・・・この声。

この夜も・・・
素敵な素敵な崇マジックは健在だった。


春に届けてくれたアルバムを繰り返し聴きながら
指折り数えて待っていたのは・・・
ハナレグミの“だれそかれそ”の夜。
温もりのある潤んだ声は会場をすっぽり包み込んだ。

雨があがって空には星が綺麗。月も出てる。
渡ってゆくお台場の涼しい風が心地いい。
まさに、ハナレグミ日和。


「たくさんのライブの中から、
 このライブを選んでくれてありがとうございます」

素敵な夜の始まりの彼の第一声は、
丁寧に語ったそんな言葉だった。
その後、照れたようににっこり笑ってお辞儀した。

伸びやかな温かな崇くんの歌声は、
黄昏時の金色の世界をゆるやかに創り上げてゆく。
一声一声でさえもグルーヴしているような彼の声。
優しくゆっくり夜空に溶けてゆく。
体中にじんわり沁み渡っていって、
いつしかしっとり潤っていた。

私のいた会場の後ろの場所までも、
どこまでも響き渡りどこまでも届いていった。
Zepp Tokyoの真上の赤い観覧車よりも高い
遙か彼方の輝く満天の星空までも。


6月のキチムで、『中央線』を聴いた。
崇くんの弾き語りとアミイゴ氏のイラストのコラボだった。
胸が熱くなった。大切な思い出になった。

崇くんの歌声が金色の世界にどんどん広がってゆき、
モノクロのスケッチ画がどんどん胸に迫ってきて、
どんどん胸が潤んでいったあの日。

最初からいきなりの・・・この曲。
あの夜とおんなじ世界にパーッと包まれた。
涙でパーッと世界が潤んできた。
崇くんったらもう、何してくれんのよ。
まだ一曲目なのに。

奥行きのある深い歌声はやがて形となって
ふわりと浮かぶまあるい音の輪っかになった。
それは黄昏の金色の中にあって、
時には遠くのほうにあったり、
時にはすぐ目の前にあったりした。

金色の輪っかに目がくらむような瞬間は、
何度も何度も繰り返し訪れた。
泣きたいくらいに満ちてた。

私は揺れないように聴き入ってた。
目の中に溜まった湖が溢れ出し、
ぽろぽろ落ちてしまいそうだったから。

「宮沢さんは山梨出身の方で、すぐに帰れるから
 中央線沿いにずっと住んでたって聞いたことがあります」

詞を紡いだTHE BOOMの宮沢和史さんのハナシにも触れた。
なんか・・・温かくなった。


今回のステージテーマ は“スナック・だれそかれそ”。
今宵の彼は、見事なまでのエンターティナー。
これだけのカヴァー曲の何を歌ってもブレない声。
何を歌ってもしっかり永積節で聴かせてしまう。
いつにも増して艶っぽくってセクシーな声。
スナックだもんね。ほんとに素敵ね、崇くん。

カラオケの映像で玉置タカシになったりして(笑)。
「映像ばっか観ないでこっち観て!」
・・・って言われても観ちゃうでしょ。こんなに面白いんだから。
「いっぱい楽しんでほしいな」っていう彼の気持ちが、
手に取るように伝わってきた。
こういうエンターテイメントっぷりって、凄い。

綺麗なブルーのペンライトを私も大きく振った。
崇くんと一緒にカラオケで聖子ちゃんを歌うなんて(笑)。
いっぱい歌っていっぱい笑った。
あこさんと一緒にペンライトを振ってるような気持ちになった。


大盛り上がりの弾けた空気感の楽しいライブだった。
私の中では“じっくり聴かせるライブ”という印象の方が強い。
しっとりと歌い上げるシーンが多かったからかな。

「悲しい曲って、自分の中ですごく“鳴る”んだよね。
 身体の中が感動でいっぱいになるっていうか」

前に崇くんがそう語っていたように、
私の中で鳴った曲は、やっぱりそんな歌だった。


キヨシローの『多摩蘭坂』に胸が熱くなる。
せつなくて優しくて。国立の景色が淡く浮かんできた。
レコーディング風景の場面を再現して。
キーボード、スティールパン、トロンボーンに囲まれて、
高らかに愛おしそうに歌った。
静かに語りかけるような歌声は“想い”が見えてくるようで。
「だけど どうも苦手さ こんな夜は」
・・・ここの伸びてゆく歌声のところで、涙が伝った。

『いっそ セレナーデ』は、左手をポッケにしまって。
今宵の彼はほんとにセクシー。なんか大人です。
「こういう歌が似合う年になりましたねぇ」
歌い終わった後、しみじみ語った姿が微笑ましくて。

くるりの『男の子と女の子』はじっと聴き入ってた。
「僕たちの年代にはこんないい歌があるんです」と崇くん。
彼は岸田さんのことを度々口にするけれど、
私もくるりが好きなので褒めてくれるとなんか嬉しい。
「さっきの曲(いちご白書をもう一度)にグッときた方も
 覚えて帰ってください」ってニヤリと笑った崇くん。
ええ・・・『岬めぐり』も知ってましたけど、何か?

『オリビアを聴きながら』は彼に思いっきり煽られ大合唱。
楽しいな。心躍らせてくれる彼を観ているのも楽しいな。

『プカプカ』もすんごく楽しみにしていた曲。
「ああ、こういう歌い方もするんだ」と初めて聴いた時は驚いた。
いつにも増してしっとり潤ったその声にも。
生で聴いても、ウルウル潤ってた。気持ちいい声だった。

この夜も、子どもの頃の家族の思い出を楽しそうに話した。
彼の話す“家族のハナシ”は何度聴いても好き。
愛情いっぱいの“家族の風景”が優しく浮かんできて。
そんな彼の温かさが歌声から溢れんばかりに滲み出てきて、
何とも言えない気持ちに包まれてしまうんだ。


『空に星があるように』は、
スティールパンのゆらゆら揺らぐ音の中で。
滲んだ温かな音色が耳に心地いい。綺麗。

スティールパンの音に乗って「せーの」で一発録りしたという曲。
「このまま自分が星になっちゃうんじゃないか・・・と鳥肌がたった」
アルバムを出した時に彼はそんな風に語ったけれど、
生で聴くスティールパンの音ってほんとに鳥肌モノ。
温度のあるディープな音色だった。

映し出されるモノクロのスケッチ画の中で
崇くんの透き通る歌声が広がってゆく。
“だれそかれそ”は私の中ではもう・・・
“スケッチ画ありき”じゃないと語れないね。
アミイゴ氏が鉛筆の線だけで創り出す世界。その余白。
歌とモノクロのスケッチ画が交差する優しい時間。
せつなくなるような泣きたくなるような時間。
私の大好きなシーン。

“アルバム・だれそかれそ”は、
囁くような声、語りかけるように歌う声・・・
会ったことのないような“永積ボイス”がそこにあって、
とても新鮮でとても愛しく感じた。
彼の声を愛し惚れ抜いてる人にとっては、
たまらない盤だろう。私も然り。

ああ、この感じ。こういうのを待ってたんだ。
3rdアルバム『帰ってから・・・』に出会った時の衝撃にも似て。
これを聴かずして、何を聴く!ってくらいに引き込まれた。
生意気を承知で感じたまま言うならば、
彼の歌声に何年も耳を傾けて聴き、
どんどん好きになってきた人向きのアルバムだとも思う。

中でも、『空に星があるように』の声がいい。
「空に星が・・・」と歌った途端にふわりと包まれて、
一瞬で“タカシワールド”に連れて行かれてしまうんだ。
聴く度に、いちばん印象に残る部分が違う歌。
この夜も、唯一無二の宝物の声は
会場いっぱいに広がってゆったりと包み込んだ。


『エイリアンズ』の詞の意味は・・・
初めてこの夜、私の中に届いた気がした。

「永積は意味を音色にして歌える数少ない人」
いとうせいこうさんが前にそう話されていたけれど、
彼の歌声の中にあると、どんどん言葉が入ってくる“不思議”。
今まで見えていなかったのに、どんどん見えてくる“魔法”。
崇マジックのトリックって、いったい何なんだろう。

浮遊感の中で、フワフワしながら聴いていた。
崇くんの語った曲録りの時のハナシを思い出していた。
「この曲を録った後、嬉しくて何度も繰り返し聴いた」ってハナシ。
なんか・・・胸がいっぱいになった。
「脳が揺れた」って・・・ほんとにそうね、崇くん。


オリジナル曲は、この夜は5曲。
数々のカヴァー曲の中で『家族の風景』を聴いた。
“永積崇のホーム”に帰ったような懐かしい気持ちに、
やっぱり包まれてしまう。

「何を見つめてきて 何と別れたんだろう
 語ることもなく そっと笑うんだよ」
・・・キュンとまた揺れた。どんどん温かくなる胸の奥。

「今日の晴天を祝して」と、
『明日天気になれ』をみんな笑顔で歌った。

「振り返ると 狐のお化け」
歌いながらくるりと振り返ってみせ、にっこり。
今までも同じシーンを観た。このシーンは大好き。
楽しそうに歌う彼の優しい笑顔が大好き。

今度はオリジナルの歌をいっぱい聴きたいな。
“日々の暮らし”や“そこにある風景”。
そんな“平凡でどこにでもあるもの”を、
世界中でこの人にしか紡ぐことの出来ない詞と
優しいメロディーに乗せて歌う彼を。


「最後の曲は今の季節にぴったりのこの曲で」
ラストに歌った『ガラス越しに消えた夏』では、
幻想的な音が創り出すグルーヴと、
ガラス細工のように繊細で、
黄昏の夕暮れのようにせつなくて、
擦れたように歌うその歌声に完全に持ってかれた。

最後のアウトロの長いループは圧巻だった。
最後にまた・・・音が形になって浮かんだ。
ゆらゆら煌めく金色の音の輪っかが優しく浮かんだ。
きっと私は・・・魔法の中にいた。
霧の中に消えていくようなグルーヴに心から震えた。


カヴァーなのだけれど、
彼自身が生きてきた風景そのものが浮かぶようで、
彼自身の内側に向きあって歌ってるような感じがした。
その思いを・・・ライブという自由な空間で、
みんなに向かって思いっきり外側に放ってくれた夜だった。

カヴァーなのだけれど、
“永積崇のオリジナルな世界”にどっぷり浸った夜だった。
情景が浮かんでくるブレない確かな歌声は、
人肌の温度のある歌となってしっかり届けられた。


ハナレグミのライブでは無防備になる自分をいつも見る。
紡ぐ詞は大人だから分かる心の機微だったりするけれど、
彼の歌の世界に身を置く時は、
子どものように無邪気な気持ちになる。
心の置きどころがうんと無防備になって彼を観てる。
この夜は、そんな置き場所がいつもと少しだけ違ってた。
「そこが・・・カヴァーライブってことなんだ」と感じた。

「オモロイあんちゃんだった」「チョー面白い兄ちゃんじゃん」
帰り道でそんな声があちこちから聞こえてきた。
クスッと笑っちゃうような話し方で笑わせて
おどけてふざけてみせて子どもみたいな彼だけれど(笑)、
“自分に向き合った歌”を届ける歌い手であると同時に、
どこかで観客側にもちゃんと心は置いてあって、
同じ目線でしっかり聴かせてしまうあたり・・・
彼は大人なんだな。
温かさが溢れんばかりの、優しい大人なんだな。


この夜、私にいちばん届いた言葉は、
アンコールで『エイリアンズ』を歌う前に
静かな声で語った言葉だった。

「高田渡さんが息子さんに書いた『漣』という歌の中に、
 “見えるものは みんな人のものだよ”
 ・・・そういう詞があるんです」

「じゃあ、自分のものは何処にあるんでしょうね」
ギターのチューニングをしながら、ポツポツと続ける。

「きっとそれは・・・心の中にあるんじゃないでしょうか」

照れ隠しなのか茶目っ気のある話し方をしてそう語った。
シーンと静まった会場の抑えた照明の薄明かりの中で、
崇くんの言葉がまあるく浮かんだ。
胸の奥が、ツーンとなった。


泣いたり、笑ったり、せつなくなったり。
忘れてた感情をぐーんと引っ張り出されて揺れたり。
いろんな世界に連れて行かれた夜だった。

崇くんが大きく見えて仕方なかった。
めちゃめちゃセクシーで大人っぽかったしね。
「カヴァーは歌の世界に無心で浸れる」
崇くんは前にそう話していたけれど、
“歌うま”な崇くんの魅力が120%出てたライブだった。

“カヴァー曲にモロ着せられちゃってる感”が
全く感じられないところは、ハナレグミならでは。
“人様の歌の上っ面をなぞらえてる感”のくすぐったさや
“人歌ゆえに聴いててどっかぬるい感”は微塵も感じられなかった。
圧倒的な表現力の彼の歌声の凄さを知った。

豊かなグルーヴを創り出す一流のバンドマンと、
とびっきりの歌を聴かせるシンガーがいる。
そんな素敵なスナックだった。

この夜は・・・
純粋に音楽が好きな人たちが鳴らす“生きてる音”を聴いた。
上手く言えないけれど、作った音じゃなくて
“生きてることそのもの”を音にしてる感じがした。

「このライブを選んでくれてほんとにありがとう」

アンコールの前に・・・
彼はもう一度、そう話した。


Zepp Tokyoを出て満天の星空を仰いだ。
熱い胸の高鳴りはこのまま家まで持って帰ろう。
心震えたこの夜を、忘れないでいよう。

みんながそれぞれに、
ハナレグミが創ったこの夜のような・・・
心がゆったり包まれる時間を少しでも持てたならば、
立ち止まって星空を見上げる時間を少しでも持てたならば、
きっと・・・世界はもっともっと変われるのに。

そんな気持ちに包まれた月明かりの帰り道。
スナック“だれそかれそ”で心から酔いしれた初秋の夜。

だって・・・
今宵の空はこんなにも星が綺麗で、
Zeppの外に出てきたたくさんの人たちの顔は、
こんなにも笑顔なんだもの。

ああ、やっぱり彼は・・・
“音楽の神様に選ばれた人”なんだ。


SET LIST

01. 中央線 (THE BOOM)
02. 大安
03. プカプカ (西岡恭蔵)
04. 愛にメロディ
05. レター
06. 接吻 Kiss (ORIGINAL LOVE)
07. 多摩蘭坂 (RCサクセション)
08. いちご白書をもう一度 (バンバン)
09. 岬めぐり (山本コウタロー)
10. 男の子と女の子 (くるり)
11. いっそ セレナーデ (井上陽水)
12. ウイスキーが、お好きでしょ (SAYURI)
13. ラブリー (小沢健二)
14. GEE (少女時代)
15. GOLDFINGER'99 (郷ひろみ)
16. いい湯だな (ザ・ドリフターズ)
17. ワインレッドの心 (安全地帯)
18. 赤いスイートピー (松田聖子)
19. ラブ・イズ・オーヴァー (欧陽菲菲)
20. オリビアを聴きながら (杏里)
21. 明日天気になれ
22. 空に星があるように (荒木一郎)

EN.1
23. エイリアンズ (キリンジ)

EN.2
24. 家族の風景
25. ガラス越しに消えた夏 (鈴木雅之)
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by kurin1022 | 2013-10-01 16:07 | ハナレグミ | Comments(8)

初秋に聴きたい声。

「ほんとに素敵な歌声ですね。
 自分の声についてどう思われますか?」

自分でも、自分の声が好きです。
 ・・・あ、言っちゃった」

いつもだったら、
こんな微笑ましい会話を聞いたなら、
思わずクスッと笑っちゃってたかもしれない。

けれど・・・私はクスリとも笑えずにいた。
この言葉を受けて、
胸がどんどん熱くなってきて、
静かな感動に包まれていたから。

「彼は、トップランナーね」
真っ直ぐにそう思った。
微動だにもせずに彼を観ていた。

私の大好きな崇くんの声は、
崇くん自身も大好きなんだ。
そのことは・・・
なんだか私をとても嬉しくさせてくれた。


2005年、HNKの“トップランナー”に、
ハナレグミが出た。

バタードッグが活動休止になったハナシに触れた。
今まで触れないようにしていた感じがあったので驚いた。

訥々と語る崇くんの言葉を聞いていたら、
ぽろぽろ涙がこぼれてきた。

バンドでやることはもうやってしまった。
仲間に黙って、自分に嘘をついて、
これ以上このまま続けていくことが苦しくて。
仲間に心の内を打ち明けることの怖さと葛藤。
『サヨナラCOLOR』を書きながら泣いたこと。

語る飾らない正直な言葉に、
胸が潤んできて仕方なかった。
自分に嘘をつけない人だった。
こういう場面で真っ直ぐに語る姿に、強さも見た。

『サヨナラCOLOR』を弾き語りで歌った。
優しくて温かくてせつなくて。
この時の歌・・・ほんとうに素敵だった。

この曲を崇くんが書き上げ、
バタードッグの仲間たちが初めて聴いた時、
彼らはどんな気持ちに包まれたのだろう。
・・・聴きながらそんなことも思ってた。


「こんな個人的な思いを歌っていいのかなと思った」
崇くんはそんなことも話した。

けれど・・・きっとこの歌を聴いた人は、
それぞれの思いで、
それぞれに受け止めて、
それぞれの胸を熱くしたのだろう。

音楽ってすごいよね。
“個の思い”は、こうやって、
いろんな思いになってどんどん無限に広がってゆく。

“個”に真摯に向き合った作品だからこそ、
たくさんの人々の共感を呼び、感動させるんだよね。

そのうち、彼を知らない人はいなくなるだろう。
大きな会場でやるライブは必然的に増えるだろう。
そう感じている。

もっとも彼は、そういうことだけを
強く望んでいるわけじゃないだろうけれど。
これからもずっと、
マイペースに自分を貫いていくのだろうけれど。


子どもの頃にフォークを聴き、ポップスを聴き、
ボブ・マーリーに出会った。
純粋に音楽を愛していて、
ほんとうに歌うことが大好きな人。
彼のハナシを聞いていて、そう感じた。

そして・・・
「自分の声が好き」と彼は言った。
ドキッとしたのは、鳥肌がたったのは、
きっと・・・私だけじゃないよね。

なんて素敵な言葉なんだろう。
なんて説得力のある言葉なんだろう。
だって・・・“永積崇”だもの。

私が崇くんの声だったら、
間違いなく完全にナルシストになってるよ(笑)。

彼はこの先々もきっと・・・
何百回、いや何千回も、
あの奥行きのある“声”について、
触れられるのだろう。
“トップランナーの声”として。


この時の番組は、
彼の創り出すいつもの独特の楽しい空気感で
とても面白かったと記憶しているけれど、
歌もハナシもあまりにも凄すぎて、
ずっと感動しっぱなしで、
胸がいっぱいになっちゃって、
クスリと笑ったのはここんトコだけだったと思う。

崇くんが自分のウチのソファを、
頼まれもしないのに持ってきてたトコ(笑)。
なんか・・・クスッと泣き笑いしたっけ。

「自分の声が好き」
・・・素敵な番組だったな、と思い出す。
もう一度、出来たら観たいと願う。


そして・・・
早く彼の声に会いたい。
そんな気持ちにキュンと包まれた。
初秋の風が優しく吹き抜けていったからかな。

この季節になると、きまって・・・
彼の声にたっぷり包まれたくなる。

崇くんは、約束してくれたんだ。
この秋の“だれそかれそツアー”は、
「めくるめくカバー地獄へ連れて行く」って。
「まかせとけ 楽しくないはずがない!!」って。
もうすぐ・・・会える。


ハナレグミの声は、初秋が似合う。
頬を渡ってゆく風は、穏やかで心地良い。

ハナレグミの季節が・・・
ゆっくり始まった。優しい季節が始まった。
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by kurin1022 | 2013-09-08 09:13 | ハナレグミ | Comments(6)

ありふれた言葉

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ありふれた言葉に気持ちが入った時ほど 
深い意味をもつ物はないよ。



歌詞カードの隅っこのほうに小さく、
タカシくんの文字で書かれたそんな言葉があった。

『ありふれた言葉』は、
2005年のハナレグミの3rdアルバム
『帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。』にある。
今野英明さんの曲のカバーだ。

いちいち手書きで悪戯っぽい落書きが書いてあって、
その中でも見落としてしまいそうな小さな文字で、
そう書いてあった。


自宅で録ったというアルバムの音は、
子どもの声や虫の声なんかも聞こえてきそうな
温度のある生活のノイズの中にあった。
ザラッとした素朴な音が、耳に心地いい。
このアルバム・・・私はほんとに好きなんだなぁって思う。
中でも・・・『ありふれた言葉』がいい。

この彼の声、ほんとにいいな。
自然な感じでラフに真っ直ぐに歌っていて。
ふっと力を抜いて歌うところなんて、ほんとにいいな。

震災の後、私はこの盤ばかり手にしていた。
理由などないけれど、こればかり聴いてた。
余計なものは何ひとつ要らなかったし、
知らなくていいことは知りたくなかった。

背伸びせずに素直に飾ることなく歌う彼の声がある。
それだけで・・・もう充分だった。
実際、アコギとウクレレと彼の声以外、
世の中には必要なかった。


アルバムタイトルは、
『帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。』
・・・料理家の高山なおみさんの本のタイトルから
彼がインスパイアされたであろうってことは、周知の通り。
アルバムの内容と合っていて、彼らしいと思う。

で・・・このアルバムが世に出た時、
同時に高山さんのこの本も読んだ。
ま・・・これってある意味、正統派の
ハナレグミファンとしての在り方だろうと思ったので(笑)。

私は仕事柄、いろんな料理本を見る機会が多い。
よくある手の届かない食材を使ったオサレなレシピと、
よくある料理家が書くオサレで素敵な文は、ちょっと苦手だ。
“素敵な暮らしのオサレな食卓”の押し売りに、
うんざりしてしまうことも少なくない。

・・・だって、レシピを見て作ってみたりするけれど、
見た目ばかりで美味しくないってこと多いんだもん(笑)。

高山なおみさんの綴ったその本は、
料理人のオサレな文からは遠く、どこか土の匂いがした。
小説としてエッセイとして料理本として、充分に楽しめた。

若い頃の自由奔放な自分の姿を、冷静に見つめていた。
心の中の空洞や葛藤や性なんかまで、
包み隠さず書かれていて。
言葉の中から“生々しい日常の暮らし”が溢れ出ていて、
時々キュンとさせてくれたりもした。
そして・・・ずっと“フィッシュマンズ”が鳴っている、
そんな本だった。


言葉の切り取り方が、ほんとに素敵だった。
私もこんな風に文を書くことが出来たらいいのにな。
読み終えて、何度もそんな風に思ったものだ。
そして・・・こういう年の重ね方をしたいものだ、と。

ずっと気になってた人と話が出来て、
「それ、私もそう」って分かち合えた時の喜びにも似てた。
揺るぎない毎日の暮らしの中で、
揺らぐ気持ちと変わらない心の在り方の描写も好き。

『日々ごはん』も読んでいる。文筆家として好き。
「要らないものは、触れなくてもいいようにと思ったのだ。」
・・・そんな読後感に包まれたりもするから。


いちばん好きだったハナシは『スぺーシャル・トゥー・ミー』。
大好きな映画を友人に強く薦めた時の思い出。

「なんかよくわからなかった」
申し訳なさそうに言う友人の顔をまともに見れなくて、
恥ずかしくて、自分が感動したことさえも
消してしまいたいような気持ちだった・・・というハナシだった。
私にも同じような経験があって、胸が軋んだ。

今なら私はちゃんとわかる。
誰が何と言っても、
自分にはかけがえのないものなのだからそれでいい。
自分だけにしかわからない特別なことを、
ひとつひとつ味わってゆけば、それで充分なのだと、
今は強く思える。

・・・最後にそう結ばれていて、私はここでジーンと熱くなった。

「ハナレグミを知らない」という人に時々出会うことがある。
「サヨナラCOLOR・・・知らないんだ」
・・・心の中でふとそう思う自分がいる。

“スぺーシャル・トゥー・ミー”だ。
こんな時こそ、このことを教訓として己を戒めている(笑)。
自分の好きなものをむやみに薦めたりはしない。

「ハナレグミを聴いてみたい」ってもしも人に言われたなら
(言われてないけど・笑)、私の好きな3rdの盤は薦めない。
これは私にとってのスぺーシャル・トゥー・ミーで、
きっと万人のそれではない。そう感じる。
愛しいと思って止まないこのジャケだって、
万人向けじゃない気がするし(弱腰なハナレファン・笑)。
『光と影』が入った『あいのわ』を薦めたりするだろう。
・・・スぺーシャル・トゥー・ミーってそんなものだと思う。


先日、ハナレグミを観た吉祥寺の“キチム”は、
ずっと行ってみたかったカフェだった。
キチムの前は、“クウクウ”という料理店だった。

「おいしいハレの料理を作ってきましたが、
 ひとりの主婦であり、料理家として、
 日々のつまらないご飯のことを、
 もっと大事にしたいと思ったことがきっかけです」

クウクウのシェフだった高山さんはそう話されてお店を辞めた。
同じ家庭料理人の主婦として、
「こういう感覚、好きだな」って思った。


後に、高山さんは、
『たべる しゃべる』というエッセイ本を出された。
大好きな“永積タカシ”が載っていたので、
正統派ハナレグミファンとしてしっかり読んだ(笑)。

その本の中には、
タカシくんが先日キチムで楽しそうに話してた
子どもの頃のハナシがたくさんあって、
懐かしく温かく思い出していた。

「猛烈に幸せであって、猛烈に悲しくなる時間が、
 そこにはいっぱいあったから」

キラキラした宝物のような温かい思い出で満ちてた。
人の幸せな大切な思い出話を聞いていたら、
こっちまで幸せな気持ちに包まれていた。


そして・・・もうひとつ。
この本は、今でも読み返すと、
キュンと胸が締め付けられてしまう。

“永積タカシ”という人の・・・
繊細で、傷つきやすくて、ナイーブで、
アーティストであるがゆえに痛みを負ってしまう、
そんな姿が訥々と綴られているんだ。

そんな彼の内側の一面を垣間見て、
キュンと胸が痛くなってしまう。

「見てはいけないものを見てしまったようで」
・・・高山さんはそう話されていた。
私も同じような気持ちになった。
今でもページをめくる度、そんな気持ちに包まれてしまう。

同時に・・・
プロの表現者としての彼の姿に、ただただ敬服してしまう。

「いちいち一喜一憂したいの」
「その瞬間、何かの気持ちでいっぱいになりたいの」
・・・“歌うこと”にどれだけの情熱を注いでいるか、を知る。


私はこの本の中で、いちばん好きなハナシはここ。
いつも胸の中がじんわり温かくなってしまう。

「悲しくない時に、悲しいなんて言えないよね」と、
タカシ君は言います。
子供のころ、マンガを描くのが好きだった。
主人公の悲しい顔を描いている時は、
つい自分まで泣きそうな顔になっている。
今でも歌いながら、
「いちいち、固まりみたいな気持ちがボカンと出てくる」そうです。

私が彼の歌を愛せずにはいられない理由は、
きっとこんなところにもある。
私は、彼の少年のように直向きで、
“歌うたいとして前のめりな姿”が大好きなんだ。

「ひと言でポンて終わらせるのが、なんか悔しいの。
 いっしょのものを、1ミリでも感じてほしいからさ」

彼はどこまでも表現者ね。
もう、カッコよくて素敵すぎるじゃん。
読む度にそう感じ、ページを閉じる。


そう言えば・・・
この頃は、“永積タカシ”ってクレジットだった。
『あいのわ』から、“永積崇”に変わってた。
彼の中で、何が変わったのだろう。
別に何も変わってないけど・・・って、
メガネの奥でにっこり笑うかもしれないけれど。

ありふれた暮らしの中で、
ありふれた言葉に気持ちが入る瞬間って
時々こうやって訪れてくれる。
年を重ねていくのってまんざらでもないな。
そう思う。

とっておきのスぺーシャル・トゥー・ミーにだって、
ありふれた毎日の中で、
こうやってちゃんと出会えているし。
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by kurin1022 | 2013-07-22 09:41 | ハナレグミ | Comments(8)

サヨナラCOLOR

「永積崇の声に生まれたかった」

・・・そう話した青年がいた。
「福祉系の大学の先生になるんだ」
そう言って職場を去って行った、
スーパーバタードッグが大好きな青年だった。

「昨日、ハナレグミの武道館に行ってきたよ」
初めて永積崇のライブを観た翌朝、私がそう話したら、
「ハナレグミって武道館でやるようになったんだ・・・」
ちょっと驚いたような表情を見せ、感慨深げに言った。
バタードッグが解散した翌年だった。

「学びながら助手として働き、いつか教壇に立つんだ」と話した。
「高みを目指してる若者は眩しいねえ」と返した。
なりたいものになれたらいいね。
・・・心の中でエールを送った。


スーパーバタードッグの『サヨナラCOLOR』を、
2004年に初めて聴いた。

きっと聴いた人の多くの人がそうなのだろうと思うけれど、
初めて聴いた時の感動はずっと離れないでいて、
いつまでも鳴り止まなかった。
耳に残ってずっと尾を引いていた。
“衝撃が走る”って、きっとこういうことを言うんだと思った。

どうしようもないやるせなさ。
泣きたいけれど泣けない気持ち。
そんな気持ちをシンプルに真っ直ぐに紡ぎ、
素直にそして伸びやかに歌っていた。
ゆるやかな涼しい表情で優しく歌っていた。

ソロのハナレグミが始まって間もない頃、
「あの曲があって、“ハナレグミ”を創っていこうと思った」
・・・彼がそう話しているのを知る。

「ハナレグミを聴きたい」という気持ちが高まるのに、
時間はかからなかった。

2008年にスーパーバタードッグは解散し、
最初で最後の地上波TV出演で『サヨナラCOLOR』を歌った時は、
「今夜、最高に素晴らしい歌声が聴けるはずよ」と、
出来る限り多くの人に言い触れ回ったことは言うまでもない。

『サヨナラCOLOR』・・・
きっとこの先もずっとずっと、
私の中で尾を引いて離れないでいるのだと思う。


その後・・・彼の歌声にたくさん触れた。
声の温度、トーン、表情、情景。
すべてがほんとに心地良くて。
その歌声にすっかり心を奪われてしまった。

泣きながら笑っているような稀有な歌声は、
“上手い”なんて陳腐な言葉では語りたくないくらいに好き。
ずっと聴いていたい・・・そんな声だった。

『帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。』
ハナレグミの3rdアルバムでは・・・
まるで口笛を吹いてるように楽しそうに歌っていて。
自然に飾らずに力を抜いていて・・・こんなにも届いてくる。

力を抜いて歌うところの声がほんとうにいい。
いい感じに力が抜けたその歌声は・・・
思いが浮かび上がって見えてくるようで。
ほんとうに歌うことが好きなんだな、と思う。

私は、あの震災の後、一ヶ月くらいずっと、
この盤ばかり繰り返し聴いていた。
理由などないけれど、こればっかりだった。


「ただの“歌うたい”になりたくて。
 なんでもない、誰でもないものになりたかった」

ヴォーカリストとして、
永積崇が素晴らしい(すぎる)ということは周知の通り。

ただの“歌うたい”になりたい、と語った彼だけど、
「音楽とは歌うものだ。自分で歌うものだ」
・・・そんな言葉も後に聞くことになる。
やっぱり彼は歌うべくして生まれてきた人なんだな、と思う。

その歌声は聴けば聴くほど、
ほんとにプロフェッショナルな“歌うたい”だと脱帽するばかり。
彼はどこまでもヴォーカリストなんだな、と感じてしまう。


本当のことが 見えてるなら 
その思いを 僕に見せて


本当のことっていうのは
多分すごくシンプルなことで、
言葉にしてしまうとどこか照れくさくて
どこか本当じゃなくなってしまう気がする。

大人になるといろんなことを覚えてしまって、
きっと・・・言葉なんてものは
自分の胸の奥まで届かないことが多くなってる。

本当のことをシンプルに詞にして歌う。
歌にするとほらこうやって・・・
毎日のシンプルな日常の中で、
ふっと何かを振り返ったりすることが出来る。
日々の暮らしの中の何かをそこに見る。
穏やかな気持ちに包まれながら。
そんな自分を今まで繰り返し見てきた。
彼の歌声の中にあって。

彼はきっと、
そういうことがちゃんと分かってる人なんだよね。
彼の歌を愛せずにはいられない理由は、
きっとこんなところにもある。
ライブの帰り道は決まって・・・
「ありがとう」なんて言いたくなってるんだ。

ちゃんと届けたいと歌う声は、
ちゃんと届きたいと思う人に届くものだから。

ヴォーカリスト永積崇の歌声って・・・
毎日のふとした時にこうやって聴こえてきて、
シンプルな日常の中の大切な何かを
振り返らせてくれたりするんだよね。
毎日にそっと色を添えてくれるんだよね。


「『サヨナラCOLOR』って、なんかせつないです。
 結局、バターのラストになっちまったアルバムの
 最後の曲だったりするんで・・・。
 歌詞が崇の気持ちとシンクロしちゃってるし」

永積崇の声に憧れ、
スーパーバタードッグを愛した青年は、
あの日そんなことを話していたっけ。

「キヨシローと崇の『サヨナラCOLOR』っていいんだよな」と彼が言い、
「キヨシローと崇の『君が僕を知ってる』もいいんだよね」と私が言った。


サヨナラから はじまることが
たくさん あるんだよ


「永積崇の声に生まれたかった」青年は、
ちゃんとなりたいものになれただろうか。
・・・時々、この歌を聴くとあの日の彼を思い出す。



ため息の理由。
ハナレグミのカバーアルバムなんていいに決まってるけれど、
『だれそかれそ』がすこぶる良かったので、
自分の中でどんどん“永積崇”が溢れ出してきてしまい、
もう手に負えない。

このままだと完全に崇ジャンキーになっちゃうから(笑)、
モードをリセットして今度はバタードッグにチューナーを合わせた。

でも・・・
『サヨナラCOLOR』なんて聴いちゃったりしたら・・・ダメじゃん。
ハナレグミとの馴れ初めなんかまでじんわり思い出しちゃったりして、
センチメンタルが止まらないじゃん。

どなたか・・・“崇止め特効薬”を私に処方してくれませんか?
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by kurin1022 | 2013-07-13 22:19 | ハナレグミ | Comments(6)

ハナレグミの“恋の予感”

ハナレグミ 「なんだろなー、できるかなー!?」 
                @吉祥寺・キチム  2013.6.16


「なぜ なぜ あなたは
 きれいになりたいの?」

『恋の予感』を楽しそうに歌いながら、
目の前に真っ直ぐに手を伸ばしてくれた。
にっこり笑って差し出したその手に
引き込まれていくように自然に手を重ねてた。
引き寄せてくれた彼の熱い手。
肩にそっと手を回してくれた。

すぐ隣りに崇くんがいて、耳元に崇くんの声がある。
ラストの歌を楽しむオーディエンスの手拍子と笑顔。
「ヒューヒュー!」という陽気な声。
大盛り上がりの弾けた空気の中で、
楽しそうに歌う彼を・・・隣りでそっと観てた。

永積崇に肩を抱かれて、彼の歌声を耳元で聴く。
こんなことはきっとこの先・・・ないだろう。

彼と一緒にゆらゆら揺れながら、そう思ってた。
歌う彼の顔を、声を、ちゃんと刻んでおきたくなった。
隣りでそっと・・・歌う彼を観てた。


「アルバムGETしてくれた人たちなんだよ」
アミイゴ氏にそう話す崇くん。
50人だけ招待してくれた限定ライブだった。
ふと舞い込んでくれた幸運に心から感謝し、キチムに行った。
ひっそりした通りにあるカフェだった。


第一部。
『ワインレッドの心』をカラオケで歌いながらのご登場。
昭和テイストの真っ赤なラメ張りのド派手衣装に、
ポマード(笑)でなでつけたような髪。
“ザ・場末の演歌歌手”のような装いで・・・大爆笑。
楽しいミラクルショーの始まり。

カラオケでビリー・バンバンの『白いブランコ』を歌ったり。
ギターを弾きながら陽水の『白い一日』を歌ったり。
家族のことや子どもの頃のことを話したり。

彼を知った時からずっと感じてたことがあって。
きっと愛情いっぱいの家庭で育ったんだろうな・・・ってこと。
自然に語る彼の言葉に、
“私が感じてた崇くん”が自然に滲み出てた。
家族の話っていいね。
優しい笑顔もいいね。

「さっきまでカラオケボックスで打ち合わせてた」と笑う。
そうとうカラオケで歌い込んでるね、彼は(笑)。
「ツアー中だから声の伸びがいい」とゴキゲン。
Crystal Keyの『Motherland』なんて、
ほんとにきれいで素敵な声だった。

彼の声は楽器ね。
どの楽器よりも楽器になる。
いろんな音を鳴らせる魔法の楽器。

学校の玄関で「歌ってよ」と言われて歌ってた・・・というくらい、
中学生の頃から“歌が上手い”と認識されてたらしい。
「10円玉とか5円玉とか(ギャラ)が降ってきたんだよ」
ビール片手に楽しそうに話す彼。

お酒を飲んだりしながら、
彼の話にみんながにこにこ耳を傾けてた。
始終、みんながにこにこ笑ってた。


時折、自身の音楽のルーツの話をしてくれた。
“私が抱き続けている永積崇”と重なった気がして、
くすぐったいような気持ちと
なんだか嬉しい気持ちが交差した。

「子どもの頃の夏休み。
 家族旅行の帰りの車の中で
 『空に星があるように』とか流れてて、
 胸をキュンキュンさせてた。
 もう夏休み、終わっちゃう・・・とかってあの感じ。
 ただ・・・そんなせつなさが嫌いじゃなくて。
 そんな子どもだったんだよね」

「どこか少年の頃の愁いや孤独を引きずってる人」
ジャケットのイラストを描かれた小池アミイゴ氏も、
同じような感じ方を話されていて。
「うん、うん!そう、そう!」・・・心の中で頷いてた。


彼の声は・・・
弾けるような踊れる曲を歌っても、
静かに語りかけるように歌っても、
深くて広い“海の碧い”になる。
優しくて淡い“夕暮れの橙”になる。
私の大好きな声。
唯一無二の宝物の声。

星の数ほどの数多なるヴォーカリストの中で、
多分・・・彼の声がいちばん好きかもしれない。


第二部。
『空に星があるように』のMVと同じ装いの崇くん。
「どーも!」とワイン片手ににこにこご登場。

今回のアルバム『だれそかれそ』のジャケットは好き。
「誰そ彼・・・“黄昏”って金色だよねぇ」
崇くんは、そう話してた。
金色の中のモノクロのスケッチの・・・
“せつなくなるような匂い”が届いてくるのが、いい。
手にした時からキュンと、好きだった。

小池アミイゴ氏は、
最前列の隅の私の席の隣りにいらした。
いろいろ面白い方だった。そして熱い方だった。
ジャケに一目惚れしていたので、
イラストはアミイゴ氏が描かれていることや、
HPを拝見し氏のことは存じ上げてはいたけれど、
シャイな私は話しかけたりは出来なかった。

『空に星があるように』と『中央線』は、
崇くんの弾き語りとアミイゴ氏のイラストとのコラボだった。

手が届きそうなくらいに近くにいて、
遮るものは何もない。
ギターを弾き優しく歌う崇くんを、
すぐそこに観る。
贅沢すぎるほどに愛おしい時間だった。

ほんとうに、素敵だった。
揺らすように弾くギターの音色。
彼の声が優しく伸びてゆく。
小さな空間にゆっくりと広がってゆく。
“初夏の黄昏の金色”にゆるやかに包まれてゆく。

モノクロのスケッチ画がどんどん迫ってきて、
どんどん胸が溢れていった。

白と黒のモノクロの世界が・・・
こんなにもたおやかに鮮やかに届くなんて。
優しい空気に穏やかに包まれた時間だった。

アミイゴ氏にどうしてもお礼が言いたくなり、
シャイな私は帰りに思い切って話しかけて握手していただいた。


アンコール。
“昭和テイストの彼”で再びご登場。
カラオケ大会と化して盛り上がった。

バンダナ巻いたファンクラブの人たち(笑)が現れてきて、
ペンライトを振ったり、タカシうちわを振ったりして。
「タカシ~!」と黄色い声援を飛ばしたりして。
紙テープも飛びかったりして。
ああ・・・面白かった。

「幻を愛したの~」と、
『オリビアを聴きながら』(原曲バージョン)をみんなで歌った。
手を揺らしながらみんな笑顔で歌った。
『ラヴ・イズ・ オーヴァー』(ラブがオーヴァーするやつ by タカシ)も。
ペンライトがゆらゆら揺れてた。

そして最後に・・・
『恋の予感』を歌ってくれた。
肩に手を回して、楽しそうに歌ってくれた。

「歌いたくなってきちゃったので、
 スイートに歌って終わりにしたいと思います」
予定外の曲に慌てるスタッフさん。笑う崇くん。

間奏の時、崇くんがにこにこ私を指差してきたので、
二人でにこにこ両手で指差しっこした。
いっぱいの笑顔で、大きく広げたその腕で、
最後にハグしてくれた。

大好きな永積崇の声で聴いたこの歌。
『恋の予感』は、特別な歌になった。


「ライブとかいろんなトコでまた会いましょう」
そう言ってバイバイして、
崇くんは笑顔で去って行った。

大きな会場で聴くハナレグミ。
小さな空間で聴いたこの夜の永積崇。

受け止めた感じは時々で違って見えた。
けれど・・・
どんな時でもやっぱり生で聴く彼の声って、
ほんとうにいい。

自然に語る何気ない話や創り出す空気感も。
いちいちクスッと笑っちゃうような話し方も。


「カバーは、歌うことだけにエネルギーを注げた」と話す。
聴き手のほうも、然り。
私は彼の紡ぐ詞が好きだけれど、
今回のカバーアルバムは馴染みの詞が多かったので、
温かい彼のあの声にじっくり耳を傾けることに
より集中してしまうような・・・そんな感じがする。
いつの間にか、あの声に聴き入ってる自分を見る。

素敵なミラクルな夜の後、
アルバム『だれそかれそ』は、より愛しくなった。
どんだけエネルギーを注ぎ込み、
どんだけ丁寧に創り上げたかってことは、
聴いていて・・・届く。
胸の奥が痛くなってしまうほどに。
ありがとう、崇くん。


彼のあの声に会えるのは、
今度は9月の終わり。
夏の終わりの風が通り過ぎていく頃。
『だれそかれそツアー』のラストで。

今度は、Zepp Tokyoの後ろの方から彼を観よう。
今度は、遠くに歌う彼を観よう。

たとえ遠くにいても
たとえ近くにいても
彼の歌声はいつも・・・
“黄昏てゆく金色の中”にある。
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by kurin1022 | 2013-06-22 11:58 | ハナレグミ | Comments(17)



日々のあわ
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