どっちだっていいか 満月だ

ロックンロール

今月で職場を去る24歳の彼女。
「ちゃんと話しておきたいんです」と、語ってくれた。

高齢者の介護の職を、一旦離れるんだという。
「障害者の介護の仕事もいずれやってみたいと思うけれど、
 その前に“食”についてちゃんと学びたいんです」と話した。
調理の仕事に就き、調理師をとって、オーガニックを学んで・・・。
可愛い目がキラキラしてた。

震災がきっかけだった、と語った。
これから子どもも生まれるだろうし、と。

「“最期まで食べることの喜びを”って、
 よくカンファレンスでくりんさんが話してくれるけれど、
 “食べること”ってほんとに大切なんだとつくづく思った。
 オーガニックのこととか自分なりに勉強していて。
 ちゃんと学んでおきたいんです。
 たった一度きりの人生ですから」と真っ直ぐに話した。

今まで振り返ることもなく、ただ前だけ向いて生きてきたけれど、
震災の後に初めて立ち止まっていろんなことを考えたんだ、と。

それ以上は詳しくは聞かなかった。
話してるうちに彼女の目が潤んできたので。
あなたならどんなことでもやっていけるよ、と思った。
そんな仕事ぶりの彼女だった。

「くりんさんの好きなCDを一枚焼いて下さい」とせがまれた。
“若い彼女に贈る歌”・・・迷ったけれど、
くるりの『ロックンロール』が入った盤にした。

たった一かけらの勇気があれば
ほんとうのやさしさがあれば
あなたを思う本当の心があれば
僕はすべてを失えるんだ

晴れわたる空の色 忘れない日々のこと
溶けてく景色はいつもこんなに迷ってるのに



震災で受けた痛みは人それぞれだ。
私には計り知れない気持ちが、たくさんの方々にある。
軽々しく「収束した」とか・・・何言ってんだか、って思う。
“忘れたいこと”はあるけれど、
“忘れちゃいけないこと”を・・・強く思う。

次に東北を周る時には、できる限り細かく周って、
いろんなところで音楽を届けたいと思っている。
やっと、音楽が楽しめるようになってきた人もいるんだ。

            (2013年10月27日の“岸田日記”より)

震災の日のすぐ後に“岸田繁の風呂ロック”が予定されていた。
私もチケットが手元にあった。
私はまだ岸田さんの歌声に会えていない。

来年は、くるりを観に行こう。
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# by kurin1022 | 2013-11-21 18:25 | 音楽 | Comments(5)

タカシの夜。

浜崎貴司 GACHI シーズン3 [最終回]
其の五 浜崎貴司 vs. ハナレグミ
2013.11.15 @ shibuya duo MUSIC EXCHANGE



“声”にたっぷり包まれた夜。

この人の声は、なんて心に沁みるんだろう。
弾き語りで歌うこの声を、なんて表現したらいいんだろう。
情景がゆっくり浮かんできて、
一つ一つの言葉が胸の奥まで響いてゆく。

“ささやき”や“余韻の間”にもグルーヴが匂い立つ彼のボーカル。
弾き語りで聴くとビンビン届いてきて贅沢な気持ちになる。

崇くんの潤んだ声は、会場の空気を震わせる。
会場いっぱい震わせながら、優しく伸びてゆく。


貴司と崇。
とても素敵な・・・“タカシの夜”だった。
こぢんまりした感じのいいハコ。
椅子もあって(嬉しい!)ちゃっかり三列目に。
腰掛けて終始ゆったりとたっぷりと堪能した。

「今日は“タカシ~!”って呼ばれると、
 勘違いしちゃいますから気をつけるように」
浜崎さんがそう言ってみんなを笑わせる。
この人のハナシは素朴で飾らなくて面白くていいね。
何度もクスッと笑った。

「浜ちゃん」「積ちゃん」と呼び合って、
『GACHIのテーマ』からスタート。

その後、オリジナル・ラブの『接吻』を二人で歌った。
浜崎さんの太くて強い声は、この歌に凄く似合った。


ハナレグミのステージ。
ジャジーな感じのグルーヴの『大安』を聴く。
ゆったりと揺れていて・・・こういう感じ、素敵ね。
「たいあいあいあいあん」って擦れたように歌う声がいい。

ザックリ刻むギターを弾く彼の姿もいい。
崇くんの弾くギターの音が好き。
素朴で温かくて優しくて。
冷たい雨の一日だったけれど、心がポカポカ温まってゆく。

「こたつでみかん(この感じがたまらなく好きらしい)って感じの歌を
 この後やりますから、ちょっと温まっておきたいんで『音タイム』を」
歌い出しで“シャンシャン”って鈴の音を足で鳴らしてみせて、にっこり。
広がる青空を見上げるような気持ちになる。ウキウキ揺れてて。
一気にハナレグミワールドに導かれていった。

くるりの『男の子と女の子』には胸が大きく揺れた。
この曲は、いつ聴いてもキュンとなっちゃうな。
せつなさと甘酸っぱさが交差して、優しい気持ちに包まれた。

『エイリアンズ』『きみはぼくのともだち』『PEOPLE GET LEADY』と続く。
なんだか「ああ・・・」としか言えなくて。言葉が見つからなくて。
彼の潤んだ声にすっぽり包まれて、いつしか心がしっとり潤んでいた。
『きみはぼくのともだち』では、すすり泣く声があちこちにあった。

『家族の風景』の合間に、小さなお子さんの可愛い笑い声が届く。
彼にも届いたのだろう。にっこり笑顔になる。
歌い終わって曲の最後のところで、
「あきゃきゃきゃきゃ」と優しく可愛く真似してみせた。
「ね、いい相方いるでしょ」とにっこり笑った。
ハナレグミのライブではこういうシーンを度々観る。
彼独特の温かな空気感にふわりと包みこんでしまう。
こういう温かさも彼の大きな魅力の一つ。

「ちょっと歌いたくなっちゃったんで。今日はハイボールありますかぁ?」
後ろのバーを覗き込むように声を掛け、
「あるってー!この後の休憩の時みんな飲んで!」とにっこり笑う。
「もう少し しゃべりましょ」「ありふれた 話でしょ」
歌詞を前振りしていちいち教えてくれてみんなで歌った。

『ウィスキーが、お好きでしょ』を高らかに歌い上げた後、
「明日は晴れるようにね」と『明日天気になれ』を歌って、
こっちのタカシはひとまず去って行った。

上手く言えないけれど、崇くんの歌声の中にいる時は、
“商業的な匂い”みたいなモノが全く感じられない。

“歌うことが大好きな人”が楽しそうに歌うその姿は、
観ていてとても心地いい。
歌うことで人をほんとに幸せにする人ね、彼は。


浜崎さんのステージの後は、また二人のタカシで。
それぞれのくっきりした個性を観た後で調和する二つの声を聴く。
それぞれちゃんと主張しつつも尊重し合って混じり合う。
二人の歌い手のなせる技ね。いいね、大人の音楽って。

「二日前に二人で創って頭ん中で鳴りっぱなし」と崇くん。
「僕たちタカシ」「小さくてもタカシ」「安物でもタカシ」「高島屋でタカシ」
共作の『タカシの唄』を披露。会場は大爆笑。

「“タカシの夜”なので“タカシ縛り”で演ろうと思います」と笑う。
やなせたかしさんの『アンパンマンのマーチ』を、
二人で元気いっぱいに歌ってくれた。ほんとに元気が出る歌ね。
 
陽水のアルバム『氷の世界』から『帰れない二人』を披露。
綺麗な二つの声の重なりをうっとり聴いた。

「久富隆司さんの歌を。どんとさんの本名もタカシ」
ボ・ガンボスの『誰もいない』には、胸がキュンと潤んで熱くなった。
ああ、いい歌だなぁ・・・って改めて感じてた。

私がハナレグミを好きな理由の一つは、
どこかにちょっとした“遊び心”があるところ。
少し崩してくだけた感じにみせる彼のそのバランス感覚に、
いつもくすぐられてしまう。

『光と影』のような大きな楽曲でも、
「ぼんやり ぽっかり はっきり くっきり すっぽり うっとりと」という
ゆるやかなフレーズがちゃんとあって。
そこでほっこりやわらかい気持ちに包まれてしまうんだ。

どんとの曲の魅力は、そんな“遊び心”が満載なところ。
(おこがましいけれど)「センスいいなぁ」っていつも感じてしまう。

この夜の『誰もいない』は、歌詞が真っ直ぐに届いてきて、
なんとも言えない感慨に包まれてしまったけれど。

「がれきの街は ひっそり音もなく
 風がないても 答える人もない
 からっぽだったら みんなわるくない」

崇くんは、どんとのことが好きすぎて夢に出てくるのだという。
「どんとに抱きついてる夢。背が高いどんとの腰のあたりが自分の顔で」
「どんとに会えた嬉しさに泣いちゃったんだよ、夢の中で」
にこにこ嬉しそうに語った。

人が“好きな人のことを話す時の顔”って大好き。活き活きしてて。
崇くんって、ほんとにいい顔するんだもん。
「起きたらほんとに頬が濡れてたんだよ」って、嬉しそうに楽しそうに。
「会ったことあるんか。マジか・・・。
 どんとと会ったことあるなんてもう僕から言わせたら、
 “ボブ・マーリーに会った”みたいなことになってるから」と羨ましがる崇。
「どんとからは“先生”ってなぜか呼ばれたんだよねぇ」と貴司。爆笑。
 
「キヨシローさんとも歌ったことがあるこの歌を」
「『サヨナラCOLOR』っていう曲を」・・・会場が歓声に包まれる。
これはもう・・・「キャー!」でしょう!

「そこから旅立つことは とても力がいるよ」
ハナレグミの温かな声がパーッと会場いっぱいに広がった途端・・・涙。
後半は浜崎さんがリードボーカルをとった。
言わば・・・キヨシロー役が崇くんね。ハーモニーを優しく重ねた。

崇くんはキヨシローみたいに立って歌った。
浜崎さんが一人で歌ってる時にぐるりと会場を見回してた崇くんの顔。
とても優しかった。愛おしそうに穏やかに微笑んでた。
彼はほんとに幸せそうな表情をする人ね。
そんな崇くんの顔を観ていたら・・・また涙。
なんか、とてもいいシーンだったな。
ああ、今日観に来てほんとに良かったな。

キヨシローとの思い出話をそれぞれ語った。
崇くんは、中学の後輩だということをキヨシローに話したら、
「そっか、後輩か!」って何十回もそれだけ言われ続けてた・・・って笑った。
「後輩か!バッチリだ!って何がバッチリだかわかんないけど」と嬉しそうに。
浜崎さんは、「キヨシローさんから電話をもらって。いつも間があるんだよね。
いたたまれなくなってこっちから切るみたいな・・・」とやっぱり嬉しそうに。

アンコールの『幸せであるように』では崇くんがドラムを叩いた。
「僕、沼澤尚だから!」と嬉しそう(“タカシ縛り”ね、ほんとに)。
崇くんの髪型ってボブみたいな感じだったんだ!
ちょっと(かなり)びっくり。
いつもは耳にかけてるし(そのほうが断然いい・笑)、
大抵は帽子が載っかってるからね(早く耳にかけて欲しいと思ってた・笑)。
髪を耳にかけずにボブっぽく見せて、帽子も脱いでみせたりしてはしゃぐ彼。
なんてったって・・・ドラマー沼澤尚だもんね。

おおはた雄一さんが飛び入りでギターで参加。
笑顔がいつもほんとに優しい人ね。
楽屋にフラリと遊びに行ったら、
「YOU、出ちゃいなよ」って二人のタカシに言われたらしい。

途中で「ラップやってもいいっすか」と崇。
すかさず『ブギー・バック』を歌う崇。湧く客席。
いつものBose役が崇で、いつもの崇役が貴司。
途中で貴司のラップが止まってしまって上手く立て直す笑顔の崇。
楽しそうね、とっても。
もちろんみんなで「よくなく なくなく なくなくない?」と大合唱。
今夜の「心のベスト10 第一位」は『幸せであるように』ね。

「ほんとは鳩笛でラップんとこやりたかったんだよねぇ」
最後に腰フリフリしながら鳩笛を吹いてみせて、
崇くんがおおはたさんと肩組んで笑顔で去って行った。

「おおはたくんは初回のガチの相手で、
 ガチの最終日だからって今日来てくれたのかなぁ。
 彼のそんな気遣いってなんか嬉しいですね」
浜崎さんが感慨深げに最後にそう話されていた。

浜崎さんの『かえりみち』という歌が、ラストソング。
ブルーの照明の中、強い声が大きく響き渡った。
浜崎さんをちゃんと聴いたのは今日が二回目。
内省的な詞といつまでも耳に残る太くて強いその声が、
独特の世界感を創り出す人だ。


二人のボーカルのコントラスト。
ストレートに強く胸に飛び込む浜崎貴司の声。
じんわりとすっと胸に入り込むハナレグミの声。

きっとこの夜・・・
会場にいた誰もが、
この幸せな時間を噛みしめるように味わっていたと思うよ。

出来ることなら、このままずっと時が止まって欲しい。
出来ることなら、このままずっと終わらないで欲しい。
そう願っていたと思うよ。

あの晩、あの場所にいた人たちはきっと・・・
“世界中でいちばん幸せな歌の世界”にいたと思うよ。



SET LIST

--浜崎貴司&ハナレグミ--
1.GACHIのテーマ
2.接吻

--ハナレグミ・ソロ--
3.大安
4.音タイム
5.男の子と女の子
6.エイリアンズ
7.きみはぼくのともだち
8.PEOPLE GET LEADY
9.家族の風景
10.ウィスキーが、お好きでしょ
11.明日天気になれ

--浜崎貴司・ソロ--
12.くちづけ
13.MUSASINO
14.グローバ・リズム
15.恋サクラビト
16.僕は忘れない
17.ドマナツ
18.時はただ今だけを乗せて
19.ハレルヤ

--浜崎貴司&ハナレグミ--
20.タカシの唄(書き下ろし曲)
21.アンパンマンのマーチ
22.帰れない二人(井上陽水&忌野清志郎のカバー)
23.誰もいない(ボ・ガンボスのカバー)
24.サヨナラCOLOR(SUPER BUTTER DOGのカバー)
25.GACHIのテーマ・リプライズ

--アンコール--
26.幸せであるように〜今夜はブギー・バック
  (浜崎貴司、ハナレグミ、おおはた雄一)
27.タカシの唄(浜崎貴司、ハナレグミ、おおはた雄一)
28.かえりみち(浜崎貴司・ソロ)




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# by kurin1022 | 2013-11-19 14:28 | ハナレグミ | Comments(13)

“おまえの敵が見当たらねー”

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ロックンロールな風が吹き抜けた時間。


これから55もの都市を周って、
ロックンロールな風を吹かせるんだって。
こんな熱いステージを62回も演るんだって。
私なんて・・・考えただけで気が遠くなっちゃうよ。

・・・凄い人だな。
やっぱ、カッコいいね、あなたは。


ロックンロールな夜だった。
私の心も思いっきりロールした夜だった。

最後までどうぞご無事に、
元気にロールしちゃって下さい。
・・・そう願った。


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ああ、この夜また・・・
一人の乙女が“和義”に落ちました。
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# by kurin1022 | 2013-11-01 09:48 | 斉藤和義 | Comments(15)

多摩蘭坂

「ハナレグミの『多摩蘭坂』を聴くと泣いてしまう」
一回り年上のキヨシローファンの方がそう話された。
キヨシローの大ファンの方もおんなじ感慨に包まれるんだ。
・・・ちょっとくすぐったくなった。

『多摩蘭坂』はRCサクセションの代表的なバラードナンバー。
永積崇の歌った『多摩蘭坂』は
数え切れないくらい聴いているけれど、
いつだって寂寥の感に包まれてしまう。
いつだって胸が潤んでしまう。


夜に腰かけてた 中途半端な夢は
電話のベルで 起こされた


感情を抑えた静かな歌い方で優しく始まる。
そして・・・

だけど どうも苦手さ こんな夜は

このフレーズで溜めていたせつなさが一気に溢れ出す。
我慢していた感情がほとばしる瞬間。

抑えていた思いがこみあげるような彼の歌声の、
このワンフレーズに泣いてしまう。


照れ隠しなのですか?泣いたっていいじゃないですか。
「年甲斐もなく」や「不覚にも」は余計ですよね、と心の中で思う。
「声が沁みる。俺の世代でも聴けるなぁ」としみじみと話された。
永積崇バージョンの『多摩蘭坂』が大好きな私は、
キヨシローファンの方に「いいね」と言われたことがなんだか嬉しくて。

「キヨシローの歌った『多摩蘭坂』とは感じが違うんですよね」
私は、率直な気持ちを話した。

多摩蘭坂に一人暮ししてる若者の歌・・・と聴くけれど、
「一人だとこんな夜ってやっぱ寂しくてさ」と戯れてみせて、
寂しさを紛らわせてやり過ごしてる若者って感じがする。
ちょっとやけっぱちになってるような若さが眩しかったりもする。
キヨシローの歌声は、私にはそう届いてくる・・・と話した。

「今度、飲もうよ」「たまには家においでよ」「遊びに行くよ」
そんな言葉を寂しんぼのこの若者に掛けてみたくなるし、
「じゃあ、実家も近いんだし一人暮しなんてやめちゃいなよ!」
そう戯れたりもしたくなる。

ハナレグミの歌う『多摩蘭坂』の若者には掛ける言葉が見つからない。
触れることも、声を掛けることさえもためらってしまう。
ただ、ギュッと抱きしめることしか見当たらないんだ・・・と話した。

「そうなんだよ。ハナレグミの声って凄いよ」
おんなじ受け止め方をされていたことを知った。ちょっと驚いた。


「NHKのSONGSって番組でキヨシローとハナレグミという人が
 『君が僕を知ってる』をセッションしてて、ほんとに良かった」
そう話されたことがきっかけで、好きな音楽のハナシをしたことがあった。

“スーパーヴォーカリスト・ハナレグミ”の素晴らしさを私は話した。
「こんなスゲー歌詞を書く天才を眠らせておくなんてバカだよね」
キヨシローの名曲『スローバラード』のハナシを彼は語った。
「多摩の詩人のまま世界の片隅で燻らせておくなんてバカだよね」
RCのアルバム『シングル・マン』が数年間お蔵入りしていたハナシをされ、
このアルバムがどんだけ素晴らしいかってことを熱く語った。


話しているうちに、どうでもいいようなことが何となく口をついて出た。
「もう年だから、くりんさんのような学生みたいな音楽の聴き方はしない」
少し年上の人からこないだそう言われたんですよねって、何気に話した。

中年になるとライブから遠ざかってしまう人は少なくない。
高校生の時に行ったコンサートが最後で、
キヨシローが亡くなった時は「誰だか知らない」って話されていたし、
「主婦だから音楽聴いてるヒマなんてない」って話されていたし、
音楽の楽しみ方は人それぞれだからねぇ・・・と思って黙って聞いていた。

私にとっては、ほんとにどうでもいいハナシだった。
けれど・・・彼はちょっと熱くなった口調で、こう返された。
「いつまでも学生のままでいい」と。


2011年5月2日。
キヨシローの命日に行われたトリビュート・ライブ。
ドカドカうるさい華やかなR&Rナンバーが次々と奏でられる中、
サブステージの静寂に包まれた空気の中に一人で立ち、
ギターを抱えポツリと静かに『多摩蘭坂』を歌う永積崇の姿を観た。
ああ、この選曲は彼しかないな・・・そう思った。

ハナレグミの『多摩蘭坂』は『だれそかれそ』の最後にある。
「崇くん、ナイス曲順!」っていつも思う。
この曲がアルバムの最後で良かった。

『多摩蘭坂』は・・・
最後に静かに“鳴る”曲なんだ。


            (両手にかわいこちゃんの歌うたい・・・たまらん♪) 
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# by kurin1022 | 2013-10-23 16:14 | ハナレグミ | Comments(9)

NIKKI

人はそれぞれ自分自身の復興を意識的にも無意識にもやっていて、
その姿に胸を打たれたり、逆に尻を叩かれたりもする。
ここでは何もいいことは言わないし、言えない。
ただ書いているだけだ。自分自身の日記なので。

僕には人助けは出来ない。
そんなことないよ、してるよ、とかそんなこと言われても、出来ない。
全員が幸せになるなんてそんなこと馬鹿げている、と今でも思っているけれど、
心からそうありますように、と初めて願ったのは、震災後数カ月間だった。
その気持ちだけは、忘れないでおこうと思う。(岸田日記より)


もうずいぶん前になるけれど、彼の綴った文に初めて触れた時、
心がほぐれていくような洗われていくような、そんな気持ちがした。

岸田日記”を読むのが好き。
くるりの岸田繁さんが綴る日記。
心が揺さぶられたり元気をもらったり。

言葉の表現が的確で豊かな人。
言葉の切り取り方や語彙の多さは、憧れてしまう。
「こんなに文章が上手い人なんだ」と初めて読んだ時に思った。
気付かされることがほんとに多いし、
「ああ、そうだよね」って心の中で呟くことも多い。
感覚が似てる感じがしているから(おこがましいけれど)。

“岸田日記”には、今まで何度も背中を押された。
そして・・・何度も涙で文字が見えなくなった。
綴る文は素朴で淡々としていて、
けっしてエモーショナルな熱い文ではない。
こういう肩の力を抜いた文を普通に綴っていながら、
惹き付けられる何かがそこにはあって。

震災以後は、東北のことにいっぱい触れている。
芯が通った自身の信条や揺れる心情を吐露したい思いが、
そのまま言葉となってどんどん出てくる人だ。
真っ直ぐに思いを語る正直な姿に胸が熱くなる。
彼の真面目な人柄は文章から溢れ出ている。

頭がいい人だなって思う。
感情が言葉になり湧き出たその日記は、読んでいて心地いい。
彼の綴る上手くて知的な文章は、私の心を大きく揺らす。

そして・・・
新曲の『Remember me』がめちゃめちゃ良かった。
ほんとにいい曲だった。





風が騒ぐ夜は 家へ帰りたくないよ
みんなねごと言ってる夜は


ボ・ガンボスの歌は、昔よく聴いてたなぁ。
この『トンネルぬけて』も好き。いちばん口ずさんだ歌かも。
岸田さんの歌ったこのシーンは何度観てもいい。

どんとの愛息ラキタくんの姿を観ているとキュンとなる。
天国のどんとの“親としての気持ち”が伝わってくるようで。
ソフトな感じの爽やかな青年。父親とどことなく似ているね。

どんとはもうこの世にはいない。
娘を持つ一人の親として、やっぱりセンチな気持ちに包まれてしまう。
偉大なる父親と比べられたりするのだろうけれど、
「自分らしくあれ」と爽やかな青年に心の中でそう声を掛ける。


「浜田省吾よりこっち聴いたら」
そんなおせっかいな人に薦められて、
アルバム『BO & GUMBO』を聴いたのが最初かな。
それは・・・とても素敵なおせっかいだった。

一曲めの『助けて!フラワーマン』で完全にヤられてしまった。
「悪いあそびでもやってるんじゃねーの?」ってトコのどんとの声に。
魂が揺さぶられるようなどんとの独特な歌い方に。

言葉は多くないけれどこんなにも胸に届いてくる。
声量のあるどんとのブルースのような歌声に、
創り出す独特な空気感に、すぐに虜になってしまった。

今聴いても、やっぱりどんとの声はいいな。
みんながカッコいいバンドだったなって思う。
“緑の髪のまるで神のようなどんと”だったりして、
“カリスマ性の高い独特なオーラバリバリのバンド”って印象が
あの頃のすれていないウブな私にはあって(笑)、
なんとなく気後れしてしまい結局ライブには一回も行けなかった。
後で、すんごく後悔したけれど。

声がいい男に惚れてしまうのは昔っからだな、とつくづく思う。
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# by kurin1022 | 2013-10-11 22:39 | 日々のあわ | Comments(0)

ハナレグミの“だれそかれそ”の夜。

“ハナレグミツアー だれそかれそ” 2013.9.26 Zepp Tokyo


“永積崇”という人とおんなじ時代に生きている。
そのことが、こんなにも嬉しい。

こんなに楽しくて幸せな空間ってないもの。
こういう空間こそが私が求めてたものなんだ。


“永積崇”という人は特別な不思議な存在。
彼の創り出す幸せな独特な空気感。
ウキウキしたり、ジーンとしたり、
ハッピーになったり、ホロリとしたり。
こんなにも心躍らせ、魅了し、幸せにしてしまう。
歌声が世界遺産ならば、
創り出す空気感も世界遺産級ね。

なんでこんな幸せな気持ちになるんだろう。
彼の声に包まれるとなんでこうなるんだろう。
ハンドマイクで思いっきり前に出て
高らかに歌ってくれた『愛にメロディ』を聴いて、
なんでこんなに泣けちゃうんだろう。
とびっきりPOPでサイコーに明るい歌なのに。

長い間、私はずっと「なんで」の答えを探してた。
この夜、彼の歌声の魔法の中にあって、
ふっと答えを見つけたような気持ちになった。

“音楽の神様に選ばれた人”なんだ。
きっと、そうね。だって・・・この声。

この夜も・・・
素敵な素敵な崇マジックは健在だった。


春に届けてくれたアルバムを繰り返し聴きながら
指折り数えて待っていたのは・・・
ハナレグミの“だれそかれそ”の夜。
温もりのある潤んだ声は会場をすっぽり包み込んだ。

雨があがって空には星が綺麗。月も出てる。
渡ってゆくお台場の涼しい風が心地いい。
まさに、ハナレグミ日和。


「たくさんのライブの中から、
 このライブを選んでくれてありがとうございます」

素敵な夜の始まりの彼の第一声は、
丁寧に語ったそんな言葉だった。
その後、照れたようににっこり笑ってお辞儀した。

伸びやかな温かな崇くんの歌声は、
黄昏時の金色の世界をゆるやかに創り上げてゆく。
一声一声でさえもグルーヴしているような彼の声。
優しくゆっくり夜空に溶けてゆく。
体中にじんわり沁み渡っていって、
いつしかしっとり潤っていた。

私のいた会場の後ろの場所までも、
どこまでも響き渡りどこまでも届いていった。
Zepp Tokyoの真上の赤い観覧車よりも高い
遙か彼方の輝く満天の星空までも。


6月のキチムで、『中央線』を聴いた。
崇くんの弾き語りとアミイゴ氏のイラストのコラボだった。
胸が熱くなった。大切な思い出になった。

崇くんの歌声が金色の世界にどんどん広がってゆき、
モノクロのスケッチ画がどんどん胸に迫ってきて、
どんどん胸が潤んでいったあの日。

最初からいきなりの・・・この曲。
あの夜とおんなじ世界にパーッと包まれた。
涙でパーッと世界が潤んできた。
崇くんったらもう、何してくれんのよ。
まだ一曲目なのに。

奥行きのある深い歌声はやがて形となって
ふわりと浮かぶまあるい音の輪っかになった。
それは黄昏の金色の中にあって、
時には遠くのほうにあったり、
時にはすぐ目の前にあったりした。

金色の輪っかに目がくらむような瞬間は、
何度も何度も繰り返し訪れた。
泣きたいくらいに満ちてた。

私は揺れないように聴き入ってた。
目の中に溜まった湖が溢れ出し、
ぽろぽろ落ちてしまいそうだったから。

「宮沢さんは山梨出身の方で、すぐに帰れるから
 中央線沿いにずっと住んでたって聞いたことがあります」

詞を紡いだTHE BOOMの宮沢和史さんのハナシにも触れた。
なんか・・・温かくなった。


今回のステージテーマ は“スナック・だれそかれそ”。
今宵の彼は、見事なまでのエンターティナー。
これだけのカヴァー曲の何を歌ってもブレない声。
何を歌ってもしっかり永積節で聴かせてしまう。
いつにも増して艶っぽくってセクシーな声。
スナックだもんね。ほんとに素敵ね、崇くん。

カラオケの映像で玉置タカシになったりして(笑)。
「映像ばっか観ないでこっち観て!」
・・・って言われても観ちゃうでしょ。こんなに面白いんだから。
「いっぱい楽しんでほしいな」っていう彼の気持ちが、
手に取るように伝わってきた。
こういうエンターテイメントっぷりって、凄い。

綺麗なブルーのペンライトを私も大きく振った。
崇くんと一緒にカラオケで聖子ちゃんを歌うなんて(笑)。
いっぱい歌っていっぱい笑った。
あこさんと一緒にペンライトを振ってるような気持ちになった。


大盛り上がりの弾けた空気感の楽しいライブだった。
私の中では“じっくり聴かせるライブ”という印象の方が強い。
しっとりと歌い上げるシーンが多かったからかな。

「悲しい曲って、自分の中ですごく“鳴る”んだよね。
 身体の中が感動でいっぱいになるっていうか」

前に崇くんがそう語っていたように、
私の中で鳴った曲は、やっぱりそんな歌だった。


キヨシローの『多摩蘭坂』に胸が熱くなる。
せつなくて優しくて。国立の景色が淡く浮かんできた。
レコーディング風景の場面を再現して。
キーボード、スティールパン、トロンボーンに囲まれて、
高らかに愛おしそうに歌った。
静かに語りかけるような歌声は“想い”が見えてくるようで。
「だけど どうも苦手さ こんな夜は」
・・・ここの伸びてゆく歌声のところで、涙が伝った。

『いっそ セレナーデ』は、左手をポッケにしまって。
今宵の彼はほんとにセクシー。なんか大人です。
「こういう歌が似合う年になりましたねぇ」
歌い終わった後、しみじみ語った姿が微笑ましくて。

くるりの『男の子と女の子』はじっと聴き入ってた。
「僕たちの年代にはこんないい歌があるんです」と崇くん。
彼は岸田さんのことを度々口にするけれど、
私もくるりが好きなので褒めてくれるとなんか嬉しい。
「さっきの曲(いちご白書をもう一度)にグッときた方も
 覚えて帰ってください」ってニヤリと笑った崇くん。
ええ・・・『岬めぐり』も知ってましたけど、何か?

『オリビアを聴きながら』は彼に思いっきり煽られ大合唱。
楽しいな。心躍らせてくれる彼を観ているのも楽しいな。

『プカプカ』もすんごく楽しみにしていた曲。
「ああ、こういう歌い方もするんだ」と初めて聴いた時は驚いた。
いつにも増してしっとり潤ったその声にも。
生で聴いても、ウルウル潤ってた。気持ちいい声だった。

この夜も、子どもの頃の家族の思い出を楽しそうに話した。
彼の話す“家族のハナシ”は何度聴いても好き。
愛情いっぱいの“家族の風景”が優しく浮かんできて。
そんな彼の温かさが歌声から溢れんばかりに滲み出てきて、
何とも言えない気持ちに包まれてしまうんだ。


『空に星があるように』は、
スティールパンのゆらゆら揺らぐ音の中で。
滲んだ温かな音色が耳に心地いい。綺麗。

スティールパンの音に乗って「せーの」で一発録りしたという曲。
「このまま自分が星になっちゃうんじゃないか・・・と鳥肌がたった」
アルバムを出した時に彼はそんな風に語ったけれど、
生で聴くスティールパンの音ってほんとに鳥肌モノ。
温度のあるディープな音色だった。

映し出されるモノクロのスケッチ画の中で
崇くんの透き通る歌声が広がってゆく。
“だれそかれそ”は私の中ではもう・・・
“スケッチ画ありき”じゃないと語れないね。
アミイゴ氏が鉛筆の線だけで創り出す世界。その余白。
歌とモノクロのスケッチ画が交差する優しい時間。
せつなくなるような泣きたくなるような時間。
私の大好きなシーン。

“アルバム・だれそかれそ”は、
囁くような声、語りかけるように歌う声・・・
会ったことのないような“永積ボイス”がそこにあって、
とても新鮮でとても愛しく感じた。
彼の声を愛し惚れ抜いてる人にとっては、
たまらない盤だろう。私も然り。

ああ、この感じ。こういうのを待ってたんだ。
3rdアルバム『帰ってから・・・』に出会った時の衝撃にも似て。
これを聴かずして、何を聴く!ってくらいに引き込まれた。
生意気を承知で感じたまま言うならば、
彼の歌声に何年も耳を傾けて聴き、
どんどん好きになってきた人向きのアルバムだとも思う。

中でも、『空に星があるように』の声がいい。
「空に星が・・・」と歌った途端にふわりと包まれて、
一瞬で“タカシワールド”に連れて行かれてしまうんだ。
聴く度に、いちばん印象に残る部分が違う歌。
この夜も、唯一無二の宝物の声は
会場いっぱいに広がってゆったりと包み込んだ。


『エイリアンズ』の詞の意味は・・・
初めてこの夜、私の中に届いた気がした。

「永積は意味を音色にして歌える数少ない人」
いとうせいこうさんが前にそう話されていたけれど、
彼の歌声の中にあると、どんどん言葉が入ってくる“不思議”。
今まで見えていなかったのに、どんどん見えてくる“魔法”。
崇マジックのトリックって、いったい何なんだろう。

浮遊感の中で、フワフワしながら聴いていた。
崇くんの語った曲録りの時のハナシを思い出していた。
「この曲を録った後、嬉しくて何度も繰り返し聴いた」ってハナシ。
なんか・・・胸がいっぱいになった。
「脳が揺れた」って・・・ほんとにそうね、崇くん。


オリジナル曲は、この夜は5曲。
数々のカヴァー曲の中で『家族の風景』を聴いた。
“永積崇のホーム”に帰ったような懐かしい気持ちに、
やっぱり包まれてしまう。

「何を見つめてきて 何と別れたんだろう
 語ることもなく そっと笑うんだよ」
・・・キュンとまた揺れた。どんどん温かくなる胸の奥。

「今日の晴天を祝して」と、
『明日天気になれ』をみんな笑顔で歌った。

「振り返ると 狐のお化け」
歌いながらくるりと振り返ってみせ、にっこり。
今までも同じシーンを観た。このシーンは大好き。
楽しそうに歌う彼の優しい笑顔が大好き。

今度はオリジナルの歌をいっぱい聴きたいな。
“日々の暮らし”や“そこにある風景”。
そんな“平凡でどこにでもあるもの”を、
世界中でこの人にしか紡ぐことの出来ない詞と
優しいメロディーに乗せて歌う彼を。


「最後の曲は今の季節にぴったりのこの曲で」
ラストに歌った『ガラス越しに消えた夏』では、
幻想的な音が創り出すグルーヴと、
ガラス細工のように繊細で、
黄昏の夕暮れのようにせつなくて、
擦れたように歌うその歌声に完全に持ってかれた。

最後のアウトロの長いループは圧巻だった。
最後にまた・・・音が形になって浮かんだ。
ゆらゆら煌めく金色の音の輪っかが優しく浮かんだ。
きっと私は・・・魔法の中にいた。
霧の中に消えていくようなグルーヴに心から震えた。


カヴァーなのだけれど、
彼自身が生きてきた風景そのものが浮かぶようで、
彼自身の内側に向きあって歌ってるような感じがした。
その思いを・・・ライブという自由な空間で、
みんなに向かって思いっきり外側に放ってくれた夜だった。

カヴァーなのだけれど、
“永積崇のオリジナルな世界”にどっぷり浸った夜だった。
情景が浮かんでくるブレない確かな歌声は、
人肌の温度のある歌となってしっかり届けられた。


ハナレグミのライブでは無防備になる自分をいつも見る。
紡ぐ詞は大人だから分かる心の機微だったりするけれど、
彼の歌の世界に身を置く時は、
子どものように無邪気な気持ちになる。
心の置きどころがうんと無防備になって彼を観てる。
この夜は、そんな置き場所がいつもと少しだけ違ってた。
「そこが・・・カヴァーライブってことなんだ」と感じた。

「オモロイあんちゃんだった」「チョー面白い兄ちゃんじゃん」
帰り道でそんな声があちこちから聞こえてきた。
クスッと笑っちゃうような話し方で笑わせて
おどけてふざけてみせて子どもみたいな彼だけれど(笑)、
“自分に向き合った歌”を届ける歌い手であると同時に、
どこかで観客側にもちゃんと心は置いてあって、
同じ目線でしっかり聴かせてしまうあたり・・・
彼は大人なんだな。
温かさが溢れんばかりの、優しい大人なんだな。


この夜、私にいちばん届いた言葉は、
アンコールで『エイリアンズ』を歌う前に
静かな声で語った言葉だった。

「高田渡さんが息子さんに書いた『漣』という歌の中に、
 “見えるものは みんな人のものだよ”
 ・・・そういう詞があるんです」

「じゃあ、自分のものは何処にあるんでしょうね」
ギターのチューニングをしながら、ポツポツと続ける。

「きっとそれは・・・心の中にあるんじゃないでしょうか」

照れ隠しなのか茶目っ気のある話し方をしてそう語った。
シーンと静まった会場の抑えた照明の薄明かりの中で、
崇くんの言葉がまあるく浮かんだ。
胸の奥が、ツーンとなった。


泣いたり、笑ったり、せつなくなったり。
忘れてた感情をぐーんと引っ張り出されて揺れたり。
いろんな世界に連れて行かれた夜だった。

崇くんが大きく見えて仕方なかった。
めちゃめちゃセクシーで大人っぽかったしね。
「カヴァーは歌の世界に無心で浸れる」
崇くんは前にそう話していたけれど、
“歌うま”な崇くんの魅力が120%出てたライブだった。

“カヴァー曲にモロ着せられちゃってる感”が
全く感じられないところは、ハナレグミならでは。
“人様の歌の上っ面をなぞらえてる感”のくすぐったさや
“人歌ゆえに聴いててどっかぬるい感”は微塵も感じられなかった。
圧倒的な表現力の彼の歌声の凄さを知った。

豊かなグルーヴを創り出す一流のバンドマンと、
とびっきりの歌を聴かせるシンガーがいる。
そんな素敵なスナックだった。

この夜は・・・
純粋に音楽が好きな人たちが鳴らす“生きてる音”を聴いた。
上手く言えないけれど、作った音じゃなくて
“生きてることそのもの”を音にしてる感じがした。

「このライブを選んでくれてほんとにありがとう」

アンコールの前に・・・
彼はもう一度、そう話した。


Zepp Tokyoを出て満天の星空を仰いだ。
熱い胸の高鳴りはこのまま家まで持って帰ろう。
心震えたこの夜を、忘れないでいよう。

みんながそれぞれに、
ハナレグミが創ったこの夜のような・・・
心がゆったり包まれる時間を少しでも持てたならば、
立ち止まって星空を見上げる時間を少しでも持てたならば、
きっと・・・世界はもっともっと変われるのに。

そんな気持ちに包まれた月明かりの帰り道。
スナック“だれそかれそ”で心から酔いしれた初秋の夜。

だって・・・
今宵の空はこんなにも星が綺麗で、
Zeppの外に出てきたたくさんの人たちの顔は、
こんなにも笑顔なんだもの。

ああ、やっぱり彼は・・・
“音楽の神様に選ばれた人”なんだ。


SET LIST

01. 中央線 (THE BOOM)
02. 大安
03. プカプカ (西岡恭蔵)
04. 愛にメロディ
05. レター
06. 接吻 Kiss (ORIGINAL LOVE)
07. 多摩蘭坂 (RCサクセション)
08. いちご白書をもう一度 (バンバン)
09. 岬めぐり (山本コウタロー)
10. 男の子と女の子 (くるり)
11. いっそ セレナーデ (井上陽水)
12. ウイスキーが、お好きでしょ (SAYURI)
13. ラブリー (小沢健二)
14. GEE (少女時代)
15. GOLDFINGER'99 (郷ひろみ)
16. いい湯だな (ザ・ドリフターズ)
17. ワインレッドの心 (安全地帯)
18. 赤いスイートピー (松田聖子)
19. ラブ・イズ・オーヴァー (欧陽菲菲)
20. オリビアを聴きながら (杏里)
21. 明日天気になれ
22. 空に星があるように (荒木一郎)

EN.1
23. エイリアンズ (キリンジ)

EN.2
24. 家族の風景
25. ガラス越しに消えた夏 (鈴木雅之)
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# by kurin1022 | 2013-10-01 16:07 | ハナレグミ | Comments(8)

2013年・秋

「この人はこうやってコツコツ時を重ねてきたんだなぁ」
会場のみんながきっと、
そういう感慨に包まれた時間だったと思う。

9月1日の“せっちゃん祭り@さいたまアリーナ”で、
ステージの大きなビジョンに
“20年間のせっちゃん”がいっぱい映し出された。

私は彼の弾くギターを眩しく観ていて、
「今までどれだけの時間、練習してきたんだろう」
・・・そう思ったら、キュンと胸が潤んだっけ。

センターステージではぐるりと囲まれて、
「なかなかの恥ずかしさですよ」と
はにかんでみせたせっちゃんだった。

そのセンターステージで演った
『彼女は言った・あまちゃんバージョン』には、
「何が仙人やねん!」って心底思ったけれど(笑)。
「『あまちゃん』が佳境に入ってきましたね」
・・・悪戯っぽくせっちゃんは笑ってた。


せっちゃんが話す“佳境”とは意味が違うけれど(笑)、
『あまちゃん』が佳境に入ってきた。

朝ドラなんて15年以上観ていなかった。
クドカンの脚本が面白いので8月から観てる。

せっちゃん祭りの翌日の『あまちゃん』には、泣いた。
固唾を呑んで観てた。涙が頬を伝った。

・・・ああ、みんな生きてたんだ。よかった。
2011年に見た数々の場面が脳裏に浮かんできた。

2013年に生きてる私は、
あの大きな津波、地震がこれから来るってことを
まざまざと知っていながらそれを観てた。
胸の奥がざわざわして仕方なかった。

祭りの後の寂しさも手伝ってか・・・
“せつない気持ち”と“生きてるってことの愛しさ”と
いろんな気持ちがごっちゃになった。

上手く言葉には出来ないけれど、
『あまちゃん』の今後を見届けるまでは、
余計なことには浮かれてらんない。
そんな気持ちに包まれてしまうくらいに、すごかった。
そんな・・・朝の15分間だった。

観た後、何事もなかったように職場へと急ぎ、
いつもの生活がいつも通りに始まった。


今、世の中は『東京オリンピック』で沸き立ってる。
私も、パラリンピックの佐藤選手のプレゼンに泣き、
フェンシングの太田選手の涙の笑顔にもらい泣きした。

生涯の間で、こんな近くで開催されるってことは、
間違いなくもうないだろう。嬉しい。近くで観たい。
けれど・・・
どこか複雑な気持ちが胸の奥にある。

決定した事実であり、
大盛り上がりの中で声高に言う気持ちもない。
・・・でも、ふと思ってしまうんだ。

この先の7年間、
こういうことに大きな労力とお金を費やしてしまって
ほんとうにいいのだろうか、って。

もっとも、低能な素人の私が
そんなことを心配するなんてことは、
お門違いもいいトコなんだ。
「大いなる経済効果」「“今”こそ誘致」
有能な人たちは声高にTVでそう言ってるのだから。


7年後には・・・
“世界から注目される東京”は、
きっとキラキラ輝いているだろう。
立派な道路。目を見張るような大きな建物。
眩しい“TOKYO”の姿がそこにあるだろう。
・・・そして、思ってしまう。

7年後には・・・
開発されていく“TOKYO”と同様に
東北もどんどん復興されていって、
この夏、石巻や女川で見た
波に襲われ閉じてしまったあの食堂や、
半壊して使えなくなってしまったあの教会も、
ちゃんと建て直ってそこにあるだろうか、って。
そうあって欲しい。切に願う。

きちんと確信したかった。
有能な人たちには、
そんなことを声を高くして言って欲しかった。

大きな歓喜の中で
胸の奥がざわついたのは、
きっと私だけじゃない。


この夏は“崇に浮かれてた夏”だったので(笑)、
あっという間に過ぎていった感じがする。

そしてもう・・・秋なのですね。
“物思う秋”なのですね。

崇くんの『ハナレグミ』って名前にさえも、
キュンとなってしまうのはいったい何故でしょう。

目と目の間が離れてるから『ハナレグミ』だよ。
崇くんは、そう笑う。
Wikiにだって、そう書いてある(笑)。

バタードッグから“離れ組”して『ハナレグミ』に。
そんな彼の滲んだ思いを、
(勝手に)受け止めてみたりする“いたいけな秋”。


東北の秋は、きれいだろうな。
また行ってみたいな。
今度は、秋に。
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# by kurin1022 | 2013-09-12 10:25 | 日々のあわ | Comments(14)

初秋に聴きたい声。

「ほんとに素敵な歌声ですね。
 自分の声についてどう思われますか?」

自分でも、自分の声が好きです。
 ・・・あ、言っちゃった」

いつもだったら、
こんな微笑ましい会話を聞いたなら、
思わずクスッと笑っちゃってたかもしれない。

けれど・・・私はクスリとも笑えずにいた。
この言葉を受けて、
胸がどんどん熱くなってきて、
静かな感動に包まれていたから。

「彼は、トップランナーね」
真っ直ぐにそう思った。
微動だにもせずに彼を観ていた。

私の大好きな崇くんの声は、
崇くん自身も大好きなんだ。
そのことは・・・
なんだか私をとても嬉しくさせてくれた。


2005年、HNKの“トップランナー”に、
ハナレグミが出た。

バタードッグが活動休止になったハナシに触れた。
今まで触れないようにしていた感じがあったので驚いた。

訥々と語る崇くんの言葉を聞いていたら、
ぽろぽろ涙がこぼれてきた。

バンドでやることはもうやってしまった。
仲間に黙って、自分に嘘をついて、
これ以上このまま続けていくことが苦しくて。
仲間に心の内を打ち明けることの怖さと葛藤。
『サヨナラCOLOR』を書きながら泣いたこと。

語る飾らない正直な言葉に、
胸が潤んできて仕方なかった。
自分に嘘をつけない人だった。
こういう場面で真っ直ぐに語る姿に、強さも見た。

『サヨナラCOLOR』を弾き語りで歌った。
優しくて温かくてせつなくて。
この時の歌・・・ほんとうに素敵だった。

この曲を崇くんが書き上げ、
バタードッグの仲間たちが初めて聴いた時、
彼らはどんな気持ちに包まれたのだろう。
・・・聴きながらそんなことも思ってた。


「こんな個人的な思いを歌っていいのかなと思った」
崇くんはそんなことも話した。

けれど・・・きっとこの歌を聴いた人は、
それぞれの思いで、
それぞれに受け止めて、
それぞれの胸を熱くしたのだろう。

音楽ってすごいよね。
“個の思い”は、こうやって、
いろんな思いになってどんどん無限に広がってゆく。

“個”に真摯に向き合った作品だからこそ、
たくさんの人々の共感を呼び、感動させるんだよね。

そのうち、彼を知らない人はいなくなるだろう。
大きな会場でやるライブは必然的に増えるだろう。
そう感じている。

もっとも彼は、そういうことだけを
強く望んでいるわけじゃないだろうけれど。
これからもずっと、
マイペースに自分を貫いていくのだろうけれど。


子どもの頃にフォークを聴き、ポップスを聴き、
ボブ・マーリーに出会った。
純粋に音楽を愛していて、
ほんとうに歌うことが大好きな人。
彼のハナシを聞いていて、そう感じた。

そして・・・
「自分の声が好き」と彼は言った。
ドキッとしたのは、鳥肌がたったのは、
きっと・・・私だけじゃないよね。

なんて素敵な言葉なんだろう。
なんて説得力のある言葉なんだろう。
だって・・・“永積崇”だもの。

私が崇くんの声だったら、
間違いなく完全にナルシストになってるよ(笑)。

彼はこの先々もきっと・・・
何百回、いや何千回も、
あの奥行きのある“声”について、
触れられるのだろう。
“トップランナーの声”として。


この時の番組は、
彼の創り出すいつもの独特の楽しい空気感で
とても面白かったと記憶しているけれど、
歌もハナシもあまりにも凄すぎて、
ずっと感動しっぱなしで、
胸がいっぱいになっちゃって、
クスリと笑ったのはここんトコだけだったと思う。

崇くんが自分のウチのソファを、
頼まれもしないのに持ってきてたトコ(笑)。
なんか・・・クスッと泣き笑いしたっけ。

「自分の声が好き」
・・・素敵な番組だったな、と思い出す。
もう一度、出来たら観たいと願う。


そして・・・
早く彼の声に会いたい。
そんな気持ちにキュンと包まれた。
初秋の風が優しく吹き抜けていったからかな。

この季節になると、きまって・・・
彼の声にたっぷり包まれたくなる。

崇くんは、約束してくれたんだ。
この秋の“だれそかれそツアー”は、
「めくるめくカバー地獄へ連れて行く」って。
「まかせとけ 楽しくないはずがない!!」って。
もうすぐ・・・会える。


ハナレグミの声は、初秋が似合う。
頬を渡ってゆく風は、穏やかで心地良い。

ハナレグミの季節が・・・
ゆっくり始まった。優しい季節が始まった。
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# by kurin1022 | 2013-09-08 09:13 | ハナレグミ | Comments(6)



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