どっちだっていいか 満月だ

思い出は美しいままで 笑ってる この胸の奥で

c0217793_1149630.jpg


「桐島、部活やめるってよ」   朝井リョウ

たまたま何気なく映していたテレビで、
早稲田のストリートダンスサークルで
仲間と踊っている若者を見た。

『小説すばる新人賞』を取った時、
「そんなばかな」・・・が周りの反応でしたね。
小説を書いていることは
周りの誰にも教えていなかった、と話す。
サークルの練習も、執筆中はサボり気味で
・・・やっぱ、気が引けましたし。

涼しげな表情でそう話す普通の大学生。
彼の書いたその小説を・・・読んでみたくなった。


本当は、世界はこんなにも広いのに、
僕らはこの高校を世界のように感じて過ごしている。


高校生の感覚がなくならないうちに書きたかった、と話す。
学生服がまだ近くに感じる人じゃないと、
ここまでリアリティーのあるものは書けないだろう。

五人の同級生が、高校生活をそれぞれの視点から語る。
オムニバスの形で描き、「桐島クン」自身は
最後まで語ることがない。センスがいいな、と思う。

娘が読むケータイ小説と同様の、会話や短文の羅列に
少々疲れたりもするが、時々キラリと光る言葉がいい。

熟れたトマトでもつぶすように、心臓が
上からぐしゃりとされたような気分になる。



誰もが高校生の時に経験する、階層意識が話の軸だ。

高校って、生徒がランク付けされる。
上か下か。この判断だけは誰も間違わない。


気づかない振りをするのを得意とし、
自分で勝手に立場をわきまえ、
同級生間の確固たる位置を甘受しているように装い
己を確立している、そんな繊細な心の揺れ。

冴えない下のランクの奴が、実は眩しく見えていたり、
表面じゃない誰にも言わない内面のランク付けを、
常に冷静に客観的に描いているところに、読み応えがある。

風助の心の描写に、同世代の筆者の
今しか出来ない筆運びが光った。

悲しそうな、残念そうな顔をしろ。
耳元で俺が俺に囁いた。
俺は嬉しいんだ。桐島がいなくなって。
考えれば考えるほど、自分がどんどん
嫌な奴になっていくから、結局蓋をする。



青春って、見栄や建前という鎧をまといながら、
何かを渇望している自分自身にしか語れないその思いを
カバンの底にしまい込んで、歩いて行くんだよねえ。
いつの時代も。

俺はどんどん重くなっていくカバンと戦っていた。

思春期の微妙な心の描写に、あの頃を思い出していた。




私が好きになり、付き合った男子は、
上のランクの人ではなかったな。

高校時代、自分で言うのもなんだけど・・・
そこそこモテたし、時々告白されたりした。
ズーズーしくってすみません。言うのはタダなんで
勝手に言わせておいてやってください。


俺のほうがいいのに・・・と、わざわざ
お節介なラブレターをくれた上のランクの男子がいた。
まるでテストの採点をしているかのような文が綴られていた。
Aクンと付き合って君は明らかに変わった。
違う雰囲気の知らない人になっていく。前のほうがいいのに。
そのことが自分を落胆させているんだ(そんなの知るか!)
・・・そんな内容だったと思う。
恋して何の変化も遂げないのなら、しない方がマシだ。

こういうことを形にしてしまう、このセンスが嫌なんだ。
自分の狭量な価値感を少しも疑ったりしない人だな、と
私は勝手にそう評していたし、
私達のほうがよっぽど大人だな、と勝手に思うことが、
自分達の恋愛を盛り上げる手助けとなった。

自意識の高い、若さという目盛りの天秤が、
あの頃の・・・蒼くて苦い青春の核だった。


昨年、15年振り位に、手紙の彼とばったり会い、
他愛のないことを話した。
あの日の手紙のことが浮かんできたが、
あの頃と同じように気づかない振りをしていた。

猪突猛進って感じで突っ走ってたから、と彼は笑い、
時間を待たずして手紙のことに触れてきた(この期に及んで)。
相変わらずストライクを投げるねえ・・・。
渡す前に、実はアイツにあの手紙見せたんだ、と聞いて
思いきりドン引きした(もっとお節介なことやってたんかい!)。

ゴーイングマイウエイを突っ走ってたAクンだったから、
そんなの見ても、なんの感慨もナシって感じだったろうな。
あの日の手紙のことを、私はAクンに話すことはなかったし、
Aクンも一切話さなかった。

私達は気づかない振りをするのが得意な高校生だった。
この胸の奥で、自意識過剰な己を(こっそり)身に付け、
誰よりも大人だよな、と若い自分の天秤で(こっそり)計り、
鋼のような大人の心を装って・・・青春してた。


「中学校は大人になることを学ぶところです」
今日は、娘の入学式だった。
娘の青春は・・・今、始まったばかり。
雲ひとつない、満開の桜の中で。
[PR]
by kurin1022 | 2010-04-08 15:02 | | Comments(4)
Commented by ヒナ at 2010-04-09 17:46 x
この本は新聞に載っていて読みたいと思っていました。
青春のキュンとくる場面がいっぱいありそうです。くりんさんの感想を見て
そう思いました。
若い時って、自意識がめっちゃ強かったな、やっぱり。
手紙の男性みたいな人って、たまに居るけど、この人はくりんさんのことを、
よほど好きだったんでしょうね。いいなぁ、モテるって。そこそこ・・・なんて
謙遜しなくてもいいのに~^^v
小説すばるに、一度くりんさんも応募してみたらええんちゃうかな~!
こんなに感性豊かに書いてはるんやから。
Commented by emuzu at 2010-04-10 02:37 x
やっぱり! くりんさんとってもかわいいですもの!
そりゃ泣かせた男の10人や20人いても不思議ではないわ♪
このストライクの彼、当時は相当くやしかったんでしょうねぇ(今もかな?)
この前言ってらした観覧車に乗らなかった彼なのかな?むふふ^^

うちの娘も携帯小説読んでます 私にも読んで!と勧めてきます
『こんぺいとう』だったかな?

娘ちゃん部活決めました?うちはかなり悩んでます 運動が苦手なんです^^;
Commented by kurin1022 at 2010-04-10 11:40
♪ ヒナさん

この本、もう10万部突破ですって!世代を超えて読まれているんだそう。
二時間位で読んじゃったけど、引きこまれましたね。お薦めします。
何と言っても、このタイトルにセンスを感じます。
これが・・・「青春のカバン」(勝手に付けてみた)とかだったら、
きっとこの本を手にする人は今より少なかったと思う。
テレビでこの本のことを知ったのですが、そうじゃなくても、きっと
「タイトル読み」してましたね、間違いなく・・・。
手紙の同級生は、真っ直ぐな感じで、おっさん化していませんでした。
いつでも彼の明るさは眩しすぎるくらいで、キラキラしていて羨ましくなりました。
Commented by kurin1022 at 2010-04-10 12:06
♪ emuzuさん

言うのはタダだし、勝手を書かせていただきましたが、
ここに食い付いていただけたりすると・・・かなり照れてしまいますね、やっぱり。
スミマセン。若さゆえに自意識が高かった、あの時代の心の天秤を思い出して、
書いてみたくなったんです。手紙の彼は凄く爽やかな青年でしたね(今でも)。
大人になりかかっていた私にとっては、ストレートな光は眩しすぎたんです。

娘は、「空の上から愛してる」ってケータイ小説を読書中。
絶対、私には見せてくれません。恋愛ものなんで・・・照れがあるみたいで。
部活はバレーかテニスにしようかな、と言っています。
ところで・・・担任が23歳の、スポーツで夢を実現したんだ!という、これがまた、
超爽やかな青年。爽やかな顔立ち。真っ直ぐな青春って感じ。
青春が始まったばかりの子供たちにとっては、ムードメーカー的に良いのでは。
親にとっても・・・ふふふ。
<< グリーンのケータイ 観覧車はセピア色の青春の中に >>


S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
カテゴリ
最新の記事
WE STILL LOVE ..
at 2014-09-03 19:22
LIFE IS COMIN'..
at 2014-07-02 15:18
六月の花嫁さんへ。
at 2014-06-23 13:57
glory days
at 2014-05-22 16:56
料理=くりん
at 2014-05-12 11:54
ファンキーパーリーな時間
at 2014-02-18 13:04
星空の中、聖なる夕べに。
at 2014-01-07 09:08
いちょう並木のセレナーデ
at 2013-11-30 10:41
ロックンロール
at 2013-11-21 18:25
タカシの夜。
at 2013-11-19 14:28
“おまえの敵が見当たらねー”
at 2013-11-01 09:48
多摩蘭坂
at 2013-10-23 16:14
NIKKI
at 2013-10-11 22:39
ハナレグミの“だれそかれそ”..
at 2013-10-01 16:07
2013年・秋
at 2013-09-12 10:25
初秋に聴きたい声。
at 2013-09-08 09:13
風船がふわりと舞った祭りの夜に。
at 2013-09-06 07:47
祭りの前に。
at 2013-08-30 17:54
このタイミングで。
at 2013-08-17 17:14
ありふれた夏の日
at 2013-07-22 16:23
最新のコメント
(続きです) 20..
by kurin1022 at 22:09
♪ ヒナさん おひ..
by kurin1022 at 22:00
くりんさん、おひさ♪ ..
by ヒナ at 16:23
♪ カギコメさん ..
by kurin1022 at 22:38
♪ きゅーん@きっしーさ..
by kurin1022 at 22:27
noteから来ました。 ..
by きゅーん@きっしー at 20:53
♪ sirikiさん ..
by kurin1022 at 10:18
お久しぶりです PCに..
by siriki-otona at 23:25
♪ ヒナさん ほん..
by kurin1022 at 22:19
大阪も、めっちゃ盛り上が..
by ヒナ at 16:14
♪ kouさん 優..
by kurin1022 at 22:18
♪ ヒナさん こち..
by kurin1022 at 22:04
星空の素敵な世界の中で、..
by kou at 22:11
あけまして今年もよろちく..
by ヒナ at 21:16
以前の記事
お気に入りブログ
外部リンク
ライフログ
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧